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サステナビリティ開示基準の“アルファベットスープ”解消を目的に、2021年11月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、国際会計基準(IFRS)の作成に関わるIFRS財団によって設立されました。そのISSBが2023年6月、『サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(IFRS S1)』と『気候関連開示(IFRS S2)を公表しました。
ISSBでは開示基準の策定に際し、IIRC、SASB、CDSBらの持つ知見やノウハウ、コンセプトなどを統合し、フレームワークを構築しています。
『IFRS S1』では、サステナビリティに関する開示全てに適用されるような普遍的なルールを定めており、投資家の情報ニーズを満たすためのサステナビリティ関連のリスクと機会に関する情報を財務情報と一緒に開示することを要求しています。一方『IFRS S2』は気候関連に特化した開示ルールを定めています。
ISSBは、2023年10月に解散した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)から企業関連の進捗を監視する責任も引き継いでいます。『IFRS S1/S2』のフレームワークについては、TCFD提言を踏襲し〈ガバナンス〉〈戦略〉〈リスク管理〉〈指標と目標〉の4つのエレメントをベースに組み込んでいます。また、グローバルな情報開示プラットフォームを運営する国際NGOであるCDPともパートナーシップ契約を結んでおり、2024年のCDPの気候サーベイは、『(IFRS S2)』ベースとなっています。
ISSBの公表した開示基準が、これまでの任意のサステナビリティ開示基準と大きく異なる点は、任意開示ではなく法的開示、有価証券報告になるということです。今後は、この『IFRS S1/S2』がサステナビリティ開示基準のグローバルスタンダードになっていくと見られています。
『IFRS S1/S2』については、2023年6月の開示基準公表以降、世界30カ国以上で基準適用の議論がされています。適用検討を開始している国の株式時価総額を合わせると、世界の時価総額の40%を超え、グローバルなGDPの55%を超えます。ISSBのサステナビリティ開示基準は、そのまま採用するだけでなく、各国の法律や商習慣に合わせたアレンジもできるように設計されています。
日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が『IFRS S1/S2』に相当する〈日本版の基準〉として『SSBJ基準』を開発しています。『SSBJ基準』は、プライム上場企業が適用対象となることを前提に開発された基準です。具体的には、プライム市場・時価総額3兆円以上の企業に対し2027年3月期から、1兆円以上の企業に対し2028年3月期から、5,000億円以上の企業に対し2029年3月からの義務化を予定しており、それ以外のプライム上場企業については順次義務化を計画しています。
サステナビリティは、最終的にBS、PL、キャッシュフローという企業の本丸である経営に影響していく要素となってきています。今後のサステナビリティ情報開示には、環境やサステナビリティ推進部といった担当レベルではなく、CEO、CFOといった経営サイドが関わり、企業経営そのものの問題として、本腰を入れて取り組んでいく必要があるでしょう。
『欧州グリーンディール』を最重要課題とし政策を進める欧州では、2023年1月に、新たなサステナビリティ情報開示基準となる『企業サステナビリティ報告指令(CSRD)』を発行しています。
『CSRD』は、EU域内の大企業や上場企業に対するサステナビリティ情報の義務的な開示を規定した指令です。5万社超が対象になると言われており、EU域内で事業を展開する日本企業も、条件に当てはまる場合は2025年から適用が開始されます。欧州ではさらに、2028年会計年度から『CSRD』のEU域外適用の開始も予定しており、EU域内に拠点を持つ一定規模以上の日本企業も適用対象となります。
日本企業にとっては今後、EU域内にある子会社について『CSRD』対応が求められるだけでなく、EU域内で一定規模以上の事業を展開している企業についても、連結ベースでのサステナビリティ情報開示が求められる可能性が出てきます。『CSRD』の規制に関する情報は随時アップデートされていきますので、適用対象になる可能性のある企業は、最新の情報と自社の状況を確認し、早めの対策を打っていく必要があるでしょう。
サステナビリティ情報開示についての新たな動きとして、生物多様性への注目の高まりがあります。2021年6月には、TCFDの自然資本版となる自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が発足し、2023年9月に開示枠組を公表しています。
CDPでも、2024年6月に公表した新しい開示プラットフォームで〈気候変動〉と合わせ〈ネイチャー〉対象としたデータ収集が追加されています。
また、ISSBにおいても、2024年4月に、生物多様性・生態系および生態系サービス、そして人的資本を今後2年間の主要テーマに設定することを発表しています。
ESGのS:社会という意味では、2024年9月に、不平等・社会関連財務開示タスクフォース(TISFD)が正式な設立を発表しています。TISFDは、不平等関連財務情報開示タスクフォース(TIFD)と、社会関連財務情報タスクフォース(TSFD)の統合組織です。
TISFDでは、所得の偏りや気候変動・生物多様性といった課題に起因した不平等の拡大が、社会の分断とともに、人的資本の形成や金融市場の安定性を脅かすリスク要因となっているといった現状認識のもと、企業・金融機関に対し、不平等・社会関連の影響、依存、リスクおよび機会についての情報開示を推奨する国際的な開示フレームワークの開発を計画しています。
サステナビリティ情報開示を取り巻く状況は、常に変化しています。気候変動対策としての脱炭素における〈スコープ3〉はもちろん、生物多様性保護といった取り組みと情報開示には、自社だけでなく、バリューチェーン全体、あらゆるステークホルダーを巻き込む必要があり、大手だけでなく、そこに連なる中小企業にも対応が求められることになります。
自社のサステナビリティに関する取り組みを、信頼性と透明性の高い形でデータ化し可視化していくことは、企業価値を高める上でもリスク回避という意味でも、今後、企業規模の大小に関わらず不可欠なものとなっていくでしょう。