サステナビリティ経営のトピックス サステナビリティ経営のトピックス
持続可能な経営が求められる中、企業に対するサステナビリティ報告書の開示基準やデューデリジェンス規制の状況は刻々と変化しています。2023年1月には、EUのサステナビリティ開示規制である「CSRD」(企業サステナビリティ報告指令)が発効され、2024年度以降段階的に対象が拡大されます。こうした潮流の中で、企業のサステナビリティ評価を行うサービスを提供する「EcoVadis」について、グローバルに高い信頼性と実績を持つ同社の評価を活用した情報開示の必要性やメリットを解説します。

世界で信頼されるサステナビリティ評価機関

グローバルなクラウドベースのSaaSプラットフォームを介し、包括的な企業の社会的責任(CSR)評価サービスを提供するEcoVadis。2007年に仏・パリで創業以来、「世界のビジネスにおいて最も信頼されるサステナビリティ評価の提供」をミッションに、13万社以上に評価を提供するサステナビリティ評価機関へと成長してきました。パリを本社にニューヨーク、ロンドン、香港など世界の主要都市に拠点を持ち、日本には2019年、東京にオフィスを開設しています。EcoVadisの評価手法は、サステナビリティに関する国際基準の策定を使命とするGlobal Reporting Initiative(GRI)、国連グローバル・コンパクト、ISO26000(社会責任に関する国際規格)など、世界基準のサステナビリティ・スタンダードに基づき、220以上の業種に対応し、180カ国以上で活用されています。
EcoVadisでは、専門知識とエビデンスに基づく独自の評価システムにより、企業とその取引先のサステナビリティパフォーマンスを監視し、改善のための提案を行っています。〈環境〉〈労働と人権〉〈倫理〉〈持続可能な調達〉の4つのテーマで財務以外の幅広い管理システムを網羅しており、証拠に基づいた評価はスコアカードにまとめられ、0から100のスコアと該当するメダル(ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ)が記載されます。さらに、スコアカードには、強みと改善点に関するガイダンスが示されており、評価を受けた企業は、このスコアカードを改善していくことができます。

世界で信頼されるサステナビリティ評価機関
(画像はイメージです)
メダルのイメージ(出所:EcoVadis)
メダルのイメージ(出所:EcoVadis)

「CSRD」への対応をサポートするEcoVadisのソリューション

刻々と変わるサステナビリティ報告書の開示基準やデューデリジェンス規制が企業のビジネスにも大きな影響を与えています。新しく加わった義務は多方面にわたり、幅広い項目の基準が引き上げられ、事業拠点に関係なく管轄区域内でビジネスを行う全ての企業が対象となってきています。EUの「CSRD」もそうした法律の1つです。
「CSRD」の目的は、EUにおけるサステナビリティ報告の一貫性を高め、金融機関、投資家、そして広く一般の人々が比較可能で信頼できるサステナビリティ情報を利用できるようにすることにあります。これは、既存の非財務情報開示指令「NFRD」の範囲をさらに拡大したもので、報告要件を厳格化し、サステナビリティをコーポレートガバナンスに統合しています。「CSRD」の遵守は従業員500人を超える大企業から開始され、小規模企業に遵守のための時間を与えながら、2024年~29年の間に段階的に導入されます。対象となる企業はEU域内の5万社近くになると予想され、EU圏内に子会社または支店を持つ日本企業を含めた非EU企業も、一定の基準を超えた場合には、サステナビリティ情報の開示が義務付けられる可能性があります。
この複雑かつ新しい法律を遵守する上で企業をサポートするのが、EcoVadisの提供する「Sustainability Intelligence Suite」です。全サプライヤーを対象にしたリスク特定から評価、改善支援、包括的な報告までを1つに統合したソリューションとなっています。

信頼性ある第三者評価機関からの評価が重要

EcoVadisの評価が注目される理由の1つに、世界で1,200社を超えるバイヤー企業が同社のサービスを活用しサプライヤーを評価している点が挙げられます。同社の2022年の統計によると、4万7,000人を超える調達およびサステナビリティの専門家を擁する約750の多国籍企業が、世界各国のサプライヤー拠点や特定のビジネスパートナーを評価および監視するためにEcoVadisのサービスを採用しています。欧州では、EcoVadisの評価を取引条件にする企業も出てきており、バイヤー企業は同社のSaaS型のプラットフォームを通じサプライヤー全体のポートフォリオを管理しています。
一方、サプライヤーは、EcoVadisのスコアカードを日常的な事業慣行(ベンダー登録、コンプライアンス、供給、サプライヤーのパフォーマンス、取引関係管理など)に容易に導入することができ、持続可能な資材調達の意思決定を推進し、取引先へ自社のインセンティブを積極的に提供できます。これまでに、世界各地で7万5,000社を超えるサプライヤーがEcoVadisの評価を受けており、世界の大手企業に対するリスクを軽減するとともに、環境に配慮した事業活動を行いつつ、持続的な成長を実現しています。

スコアカードのイメージ(出所:EcoVadis)
スコアカードのイメージ(出所:EcoVadis)

EcoVadisの評価を導入している日本企業の事例では、「15年前からEcoVadisを活用している」というA社があります。A社がEcoVadisを知ったのは2009年、カナダに本社のあるメーカーから同社の海外拠点に対し「取引にあたり、EcoVadisの評価を受審してほしい」と依頼があったことがきっかけ。さらに2011年には、欧州のメーカーからも同じ要望を受けたといいます。A社では、2016年に同社海外工場が国際的なメーカーの顧客から監査を受けることになった折、「EcoVadisの評価を受けているならCSRの監査の必要はない」と言われ、EcoVadisが国際的に信頼されている評価機関であること、評価の受審に取り組むことが会社にとってメリットになると再認識したといいます。

開示情報の要件や規制に対応し、競争力を高める

サステナビリティ情報の開示に対し、企業が投資家や消費者、ステークホルダー、規制機関などからの増え続ける要求に応えるには、信頼性の高い第三者評価機関の評価が必要となっていきます。特にサプライヤーにとっては、世界のバイヤー企業1,200社以上からの信頼と実績を持つEcoVadisの国際基準のサステナビリティ評価を受審することで、自社のパフォーマンスに関する信頼性の高い評価を提示し、リスクを低減しつつ競争力を高め、変わりゆく開示情報の要件や規制に対応していくことが重要となっていくでしょう。

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