- 製品情報
-
- 個人・家庭向けプリンター
<用途から選ぶ>
- <カテゴリーから選ぶ>
- 法人・業務向けプリンター・複合機
- 産業向けプリンター・デジタル印刷機
- 消耗品
- 産業向け製品
- <インクジェットソリューション>
- 個人・家庭向けプリンター
2015年のパリ協定以降、気候変動や生物多様性、人権問題など、環境や社会の持続可能性(サステナビリティ)への危機感が世界的に高まり、企業活動においても、経済的価値と社会的価値の両立を求める動きが強まっています。
ESGを含め、環境や社会に配慮した投資を約束する国連の責任投資原則(PRI)への署名機関は、2020年以降急増し2024年には5,000機関以上に上っており、投資判断の基となるサステナビリティ情報の開示ニーズが高まっています。2023年6月には、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がサステナビリティ開示基準として『IFRS-SI:サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項』と『IFRS-S2:気候関連開示』を公表。欧州では、サステナビリティ関連活動に対する企業の説明責任と透明性を高めることを目的の1つに、2024年1月から『CSRD:企業サステナビリティ報告指令』を施行。2028会計年度からのEU域外適用開始も予定しており、これまで非財務情報として各企業の自主的な取り組みであったサステナビリティ情報開示の義務化が世界的な潮流として進んでいます。
近年、多くの企業で公開が進むサステナビリティレポートは、環境や人権など、企業の社会的問題に対する取り組みを、ステークホルダーへ向け透明性と信頼性の高い形で公開するもので、一般的に環境・社会・ガバナンス(=ESG)の3つの要素について公開するのが主流となっています。
サステナビリティ情報の開示については、国際統合報告協議会(IIRC)、GRI、サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、CDP、気候変動開示基準委員会(CDSB)などの機関で、任意の開示基準が作られてきました。その中でも今回は、サステナビリティレポートの作成にあたり上場企業の多くが準拠している「GRIスタンダード」をベースに、一般的なサステナビリティレポートの構成要素について紹介します。
GRIは国連環境計画(UNEP)の公認団体として1997年に設立された、オランダ・アムステルダムに本部を置く非営利団体です。GRIスタンダードは、企業・組織が経済・環境・社会に与えるさまざまなインパクトについて報告することで、持続可能な発展への貢献を説明するためのフレームワークです。企業のガバナンス構造や重要課題のマネジメント、経済・環境・社会面における影響などの項目から構成されており、ガイドラインに沿って開示情報の区分を明確化することで、企業や組織の行った活動の透明性や責任説明を担保できます。
具体的には、下記の要素などについて報告していきます。
○経営方針や持続可能性に関するビジョン
企業が持続可能な未来を目指すうえでの価値観やビジョンの明示。
○マテリアリティ(重要課題)
企業にとって影響が大きく、ステークホルダーにとって重要な課題を特定し優先順位をつけ、企業としてどの課題をどの程度重要と認識し、どのように取り組んでいくかを説明。
○環境(E)への取り組み
エネルギー使用量や温室効果ガス排出量、水資源、生物多様性への配慮など。
○社会(S)への取り組み
労働環境やダイバーシティ、コミュニティ支援、人権への配慮など。
○ガバナンス(G)に関する情報
経営体制、リスク管理、コンプライアンス、倫理観に関する情報。
○データとKPI(重要業績評価指標)
活動の成果や進捗を定量的に示すための指標・データの記載。
投資家をはじめとしたステークホルダーの気候変動や社会問題に対する関心の高まりをふまえ、企業の果たすべき社会的責任と目指す方向性をサステナビリティレポートにより示していくことは、世の中の信頼を確保するために不可欠となっていきます。
AppleやAmazonなど、世界的に知名度の高い大企業においては、他社に先んじてネットゼロへ取り組むことで、企業ブランドを向上しつつ先行者利益を取っていこうといった流れがあります。また、世界的な脱炭素へ向けた動きにあわせ、一部自動車メーカーではサプライヤーへ向け、脱炭素への取り組みを義務化する動きも出てきています。つまり、それら大企業に連なる中小のサプライヤーにとっても、サステナビリティへの取り組みとその開示が事業継続に重要な要素となっていきます。
サステナビリティへの取り組みを信頼性の高いデータで示すことができなければ、ビジネスチャンスを逃すだけでなくリスクにもなり得る時代が到来しつつあります。サステナビリティレポートの重要性は、業種や企業の大小を問わず高まっていると言えるでしょう。
セイコーエプソンは、EcoVadis(本社:フランス)のサステナビリティ評価において『プラチナ』(2024年)のメダルに格付けされています。EcoVadisは、180カ国以上の国で220以上の業種、13万社以上の企業のサステナビリティを、独自の評価基準で評価している評価機関です。『プラチナ』の格付けは、評価対象企業の1%に与えられるもので、セイコーエプソンは4つの評価テーマ〈環境〉〈労働と人権〉〈倫理〉〈持続可能な資材調達〉のいずれも高い水準の評価を獲得し、特に〈環境〉と〈労働と人権〉で優れた評価を受けています。サステナビリティレポートは、このEcoVadis回答の証明書類としても活用できます。
また、ESG課題の中で投資家の関心の高い項目や投資判断に有用な項目を特定し調査・評価を行い投資家に提供するESG評価機関(FTSEやMSCIなど)は、情報収集や調査・評価に個別の質問票だけでなく企業の公開情報を活用します。こうしたESG評価機関に具体的なデータと行動を開示する手段としても、サステナビリティレポートは大いに役立ちます。
サステナビリティ情報を公開するための現状把握、データ・情報収集、分析、レポート作成には、コストやリソースが必要となります。データを収集する現場への負担もかかるため、社内全体での合意形成が難しいこと、特にリソースに限りのある中小・中堅企業にとってはハードルの高い取り組みとなります。
しかし、サステナビリティレポートを作成することで自社の強みと弱みを正確に把握し、マテリアリティを明確化することは、企業経営において中長期視点での成長戦略やリスク回避につながります。また、透明性の高いデータを内外へ公表することは企業のブランド価値を高め、人材採用や離職率の低減にも効いてきます。いきなりサステナビリティレポートを公開できずとも、できる部分から自社のHPで開示していくことも有効でしょう。
サステナビリティに関しては、情報開示義務化へ向けた世界的な流れ、投資家をはじめとするステークホルダーの動向、世界的な気候変動対策への要求の高まりなどを考慮し、自社におけるビジネスチャンスとリスクをしっかりと見極めたうえで、できるところから取り組み、その情報を透明性と信頼性の高い形で公開していくことが重要となっていきます。