楽しむ場を広げる「デジタルアート」の体験と活用
~美術館・博物館の魅力向上を目指して~
- 共創
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近年、博物館や美術館を取り巻く環境は大きく変化しています。文化観光や地域活性化への貢献という観点から、その役割は多様化し、より高度なものとなっています。2022年の博物館法の改正に伴い、博物館の事業に追加された博物館資料のデジタルアーカイブ化は、さまざまな作品の鑑賞方法を可能にし、来館者に幅広い体験を提供することを意図しています。
さらに、デジタル化により、インターネットを通じて資料にアクセスできるため、博物館の魅力をより多くの人々に伝えることが可能になります。これにより、物理的に来館が難しい人々にも博物館の資料を楽しんでもらうことができるようになります。
一方、現状では多くの美術館や博物館がデジタルデータの活用を課題として認識しています。単にデジタルデータを公開するだけではなく、来館者や来館前に興味を持った方に魅力的なコンテンツを開発し、提供していくことが重要です。これにより、博物館の話題性が高まり、集客や地域活性化にもつながります。
2024年8月、エプソンスクエア丸の内にて、株式会社TREE Digital Studio、株式会社パースペクティブ・エンターテイメント、エプソンアヴァシス株式会社と共創し、新たなデジタルアート展「FLOWING LIVES」を開催しました。本展示では、身体の動きに応じて映像が変化するインタラクティブな要素を取り入れました。これにより、来場者が作品と積極的に関わり、より深い感動を体験できるようにしました。体験型のコンテンツは、子どもから大人まで幅広い層の興味を引きつけ、美術館や博物館でしか味わえない特別な体験を提供し、来館促進にも繋がりました。このようにデジタルデータの活用は、博物館や美術館を取り巻く環境の変化にも対応できます。
体験型の「FLOWING LIVES~浮世絵からミライへ ながれうごくアートをあそぼう~」展
実際に、スクエア丸の内で展示したコンテンツをご紹介します。
①波の中に入る3D体験「Immersive:The Great Wave」
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一つ目のコンテンツは葛飾北斎の浮世絵作品「神奈川県沖浪裏」を3DCG化してその中で、来場者に楽しんでいただくというものです。TREE Digital Studio社の技術を用いて3DCGを制作し、エプソンのプロジェクターで作品を投写、さらにカメラとAIの技術を駆使して鑑賞者の動きにあわせて作品の波の形などを変えます。鑑賞者は、腕を大きく上げると波が高くなり、まるで北斎が描いた海の中にいるような感覚を味わえます。絵画として鑑賞されていたものを3DCG化することで新しい楽しみ方を提供しています。
②自分でアート作品を創る「Live Painting Digital Duo」
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二つ目のコンテンツは、鑑賞者が「映像絵画」とコラボレーションし、オリジナルの作品を制作できるというものです。アーティスト中山晃子氏の「Alive Painting」の作品を下地に、映像絵画の制作に鑑賞者が入りこめる仕掛けを作りました。手の動きに合わせて映像絵画の画面上にインクが流れたり、笑顔に反応してインクの色が変わったり、さまざまな画材がスクリーンに出現し、鑑賞者は自分ながらの作品を創ることが出来ます。こちらもデジタルのコンテンツに鑑賞者が関われる新しい仕組みを提供しています。
③タブレットで楽しむ「神奈川県沖浪裏による重ねほん体験」
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三つ目のコンテンツは、鑑賞者が「神奈川県沖浪裏」の版画をタブレット上で一つ一つの版として分解し、色や大きさ、位置を自由に摺り重ね、自分だけの作品を制作できる、というものです。例えば夕焼けに浮かぶ神奈川県沖浪裏をイメージして全体をピンク色にした版画などを制作できます。出来上がった絵はプロジェクションマッピングとして壁に投写し、オリジナルの複製画と並べて鑑賞できます。こちらはエプソンアヴァシス株式会社が開発したソフトを使うことで実現しています。このように絵画をデジタル化することで、鑑賞を超えて鑑賞者がオリジナルの作品を創造したり、さらには元作品の良さを再認識できたりする楽しさを提供しています。
どの作品もご自身で創造した作品を、自分だけのポストカードとして持ち帰ることができるプリントサービスも提供しました。
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参加者からも「色を塗り重ねていくのが本当の版画のようで楽しかったです!」「楽しかった!こういう芸術の楽しみもあるのか!」などのコメントが寄せられ、アートを「体験」して、満足した様子が伝わりました。
共創パートナー様より
<株式会社TREE Digital Studioからのコメント>
私たちはCMやミュージックビデオなどの映像作品をはじめとするコンテンツ制作を主軸としています。今回、子どもから大人までアートに親しんでいただけるよう、直感的に分かりやすく誰もが簡単に遊べるコンテンツの設計を行いました。今後も体験者に楽しんでいただける「デジタルアート」×「高品質なコンテンツ」を提供していきたいと考えています。
<株式会社パースペクティブ・エンターテイメントからのコメント>
アートがもつ「視点」をテクノロジーで「日常の体験」として提供することにチャレンジしています。街や地域の空間が新たな感動に包まれ、アートがさまざまな人に近くなる瞬間とそのチカラの一端をこのプロジェクトで生み出していけるよう、アーティストと力を合わせていきます。
<エプソンアヴァシス株式会社からのコメント>
「もし自分が神奈川沖浪裏を摺るとしたらどんな出来上がりにするだろうか」を参加者に考えるきっかけを生み出すアプリを制作・展示しました。対象を見るだけでなく自分の感覚で分解・再構築できることは、今の不確定な世界で生き抜くために大切な能力です。遊んでくれた方がアートに対する新しい付き合い方に気付いてくれることを願ってやみません。
導入できる体験型コンテンツへ昇華させて美術館の困りごとを解決、地域活性化の一歩にも
エプソンは、今回のコンテンツ「Immersive:The Great Wave」とプロジェクターやカメラなどの機材を、一体化したパッケージとして提供します。これは博物館・美術館だけでなくイベントなどでもご利用いただけ、デジタル化による体験型のコンテンツ活用につながるものです。
さらに、美術館・博物館が所蔵するデジタルデータを活用できるよう導入支援も行います。高精細なプロジェクターなどのハードウェアを用い、各コレクションに合わせたカスタマイズを行うことで、インタラクティブな展示を実現し、来場者に感動的な体験を提供します。
エプソンは、デジタルアーカイブを活用した新たな展示体験を提案することで、美術館や博物館の魅力向上を支援します。また、多くの人々がアートを身近に感じ、社会全体でアートを楽しむ環境づくりを目指し、地域活性化に寄与していきます。
この度のパッケージのお申し込みや導入支援、共創のご相談はWebフォームからご相談いただけます。
エプソンスクエア丸の内に関するお問い合わせ|エプソン(epson.jp)