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写真を撮る人の多くがそうであるように、僕も最終的には写真を写真展で見せたいと思っています。つまり、僕の撮影している写真の終着駅は、写真展に飾られているプリントなんです。
これまで何度も写真展を開催していますが、いずれの展示プリントも、業者に頼むのではなく、自分でインクジェットプリンターで出力しました。自分でプリントすることに大きな利点があるからです。今回は、自分でつくることの利点と、展示作品を制作するときの注意点やコツなどを、ご紹介したいと思います。
インクジェットプリンターを使って自分でプリントできることの一番の利点として、好きなサイズ、好きなアスペクト比(縦横比)でプリントすることが出来る、という点がまず挙げられます。
「ゆる鉄」の展覧会では1対1の正方形にプリントしました。「ゆる鉄」は、見た人にほっこりした気持ちになってほしい、そういう写真です。縦位置の写真と横位置の写真が混在していると展示に段差ができます。しかしすべて真四角なら、ストレスなく、すーっと見ていける。そのほうが「ゆる鉄」には合うと思い、1対1にしました。
「ドリームトレイン」の展覧会では、エプサイトのプライベートラボを借りて、壁一面を飾る大きなプリントを制作しました。「ドリームトレイン」というのは、鉄道を巡る旅の中で出会った人たちに、「どんな夢を持っているか」をたずねてポートレートを撮るというシリーズです。
1枚ごとに飾るのではなく、たくさんの写真を大きな1枚にまとめ、人々の夢をコラージュのように写真に重ねて展示しました。こうすることで、書籍やウェブでは見せられない、写真展ならではの展開ができたと思います。
自分の好きな紙を選べるというのも、インクジェットプリントの利点です。お店にプリントをお願いすると光沢紙が中心になってしまいますが、僕の場合、彩度やコントラストを落とした優しい表現が多く、そういう写真には光沢紙がそぐわないですから、紙を選べるというのは、僕にとって、とっても好都合なんです。
僕が特に好きな紙は、「ウルトラスムースファインアートペーパー」です。粉を吹くぐらいマットなんですが、厚手で、色も乗りやすい紙です。もちろん光沢紙も使います。光沢なら「写真用紙クリスピア<高光沢>」です。写真屋さんに出したのと同じくらいの光沢感が楽しめる、素晴らしい紙です。主にこの2種類の紙を使うことが多いですね。
先ほど、僕の写真の最終形は写真展だと言いましたが、撮影のときに、「どんなプリントで見せるか」まで考えています。例えば、「ゆる鉄」は優しくほのぼのとした表現ですから、撮るときにはコントラストと彩度を抑え、ハイキーで。写真をゆるい雰囲気に撮って、優しい風合いのマットの紙を使います。逆にシャープにしたいときには、コントラストを上げて撮ることが多いです。明暗差を使ったドラマチックな写真の時には光沢紙を使います。写真の雰囲気と紙を使い分け、それを前提に撮影する。言い換えるなら、「あの紙でやるんだったらこう撮ろう」と決めている、ということです。
コントラストが低く、派手さがない「ゆる鉄」の写真です。これに合わせたのが、「ウルトラスムースファインアートペーパー」です。薄い紙だと運搬の際に傷が付きやすいのですが、この紙は厚く丈夫で扱いやすいので気に入っています。
こちらは鮮やかでシャープな写真です。こうした写真には「クリスピア」を使います。
「自分自身で作業ができる」という点も、インクジェットプリントの大きな利点です。例えば、お店にプリントを頼み、仕上がりに不満があるとき、「ここの青をもっと出してください」などとお願いしますね。しかし何度もそれを繰り返すと、時間もなくなってくる上に、お店に対して「悪いな」という気持ちになってしまいますよね。本来、妥協してはいけないところですが、実際は難しい。でも、自分でプリントアウトするなら、とことん自分の理想の色に追い込んでいけます。これはプロにとっても、大きなポイントなのです。
僕は表現に合わせてプリンターを使い分けています。愛用しているプリンターをご紹介しましょう。
主にマット系の紙でプリントするときには、PX-5002を使います。写真展で一番よく使用する大きさがA2なのですが、このプリンターはA2まで出力できるので、非常に役立ちます。豊かな階調を出す3つの濃度の黒インク「K3インク」が搭載されています。また、ビビッドマゼンタインク搭載なので、深い海の青や夕景なども鮮やかさを損ねることなくプリントしてくれます。
クリスピアのような光沢紙を使うときには、PX-7Vを使います。一番のよさは、光沢材であるグロスオプティマイザが搭載されていることです。また、ブルーインクとオレンジインクが搭載されていて、イエローやオレンジ系の色を鮮やかにし、人肌もきれいに出ます。マルチに活躍するプリンターです。
写真を展示するための加工には、主に、マットを付けて額に入れる方法と、額もマットも使わない方法(パネル加工)があります。僕は写真の絵柄そのものが浮かび上がる、後者のタイプが大好きです。この加工は業者さんにお願いしています。写真の裏に板を貼り、下駄をはかせ、そのパネルを会場に飾ります。
額装する場合なら、会場のレンタル額を借り、マットと写真を自分で用意するというのが、一番手軽な方法かと思います。額装でよく使われるマットには、写真を引き締めたり、写真に空気感をプラスする効果がありますから、マットをうまく活用するのもいいですね。
このようにプレートでがっちりと裏打ちされているので、展示していてもよれてきません。
しかし、どんな方法を採るにしても、注意してほしいことがあります。それが「裏打ち」です。プリントアウトしてマットを付けただけのものを展示していると、だんだんとプリントが波打つように曲がってきてしまいます。それを防ぐための加工が裏打ちです。硬い物を写真の裏に貼り、平面性を保つんですね。量販店などでも裏打ち用のキットが売られていますが、僕は業者さんに頼んでいます。せっかくのいい写真が、よれよれではもったいない。僕の持論では、お金をかけるべきは裏打ちです。ここをケチると残念な結果になってしまうことが多いです。みなさん、注意していただけたらと思います。
つくったプリントや額を単体で考えるのではなく、どんな会場に飾るかということも、併せて考えなくてはいけません。写真展の会場を下見して、それにあった額・プリント・マットを選びましょう。壁が白い会場と黒い会場では、同じ写真・同じマットの作品を飾っても、雰囲気がまったく変わります。
照明も要チェックです。僕は「ほのか旅」という個展をやった際、照明が理由でプリントし直したことがあります。「ほのか旅」は、とてもハイキーな写真で、かなり“攻めた”プリントをつくりました。しかしその写真を会場の照明の下で見ると、ハイキーと言うより「露出オーバー」な写真になってしまいました。思っていたより照明の光が強かったのです。
ですから、できれば前の方の展示を見て、どんな色や強さの照明なのかを確認しておくことをおすすめします。
これは、会場に写真を飾ってくれる業者さんのために、僕がつくった指示書です。実際の会場の寸法・プリントサイズを縮小してつくったもので、プリントをどう展示するかを表しています。この壁面で何を何枚飾るか、縦横はどうするかなどを、プリントの大きさのイメージも含めて、現地を視察して決めるようにしています。
この展示構成のイメージづくりをやらずに、設営の際にその場で考える方も多いようですが、それはあまりおすすめしません。例えば、PX-5002はA2まで伸ばせると先ほどお話ししましたが、家ではとても大きく感じたA2のプリントが、会場で見ると意外に小さかった、ということもあります。「大きさ感」を得るためにも、下見は大事ですね。
何度も言うように、写真展というのは写真家の終着駅、“見せ場”であるわけです。ですから僕の場合、「どんどん見てください」「写真も撮ってください」というようにしています。写真を飾るだけでなく、木の改札口を置いたり、大きなプリントをゆっくり見るためのベンチを置いたりして、会場全体を楽しんでもらえるようにしています。
写真展というのは僕にとってライブ会場です。来場者に意見や感想を聞くなど、ネットではできないことを楽しめるよう、とことんこだわっています。