中井精也のひと味違うプリント術

第四回 魅力的な展示構成と写真の見せ方

前回は、写真展を開催する上でのノウハウをお話ししました。ぜひ、みなさんにも写真展を体験してほしいものですが、いきなり個展というのが難しいようなら、いつも一緒に活動している仲間とグループ展を開催するという方法もありますね。
もし所属する写真サークルでそうした機会があれば、写真を提出するだけの受け身の姿勢ではなく、仕切る側になることをおすすめします。展示準備のために写真を並べるといった経験はすごく勉強になりますよ。

  • 写真のキャラクター(役割)を意識する
  • プリントの"見せ方"の色々

その1 写真のキャラクター(役割)を意識する

写真展を開催することになって、いざ自分の写真を並べようと思うと、どうしていいかわからない、という方が多いようですね。それならば写真展は壮大な組写真のようなものと考えると良いでしょう。組写真に必要なのはメリハリです。では、どうやってそのメリハリをつけるかというと、それぞれの写真のキャラクターを考えるのです。僕はよく、写真を役者に例えながら、組写真(写真展)という舞台をつくりあげていきます。

主役写真の例

主役写真とは、いつもみなさんが撮りたいと思っている最高の写真です。僕の場合だと、きれいな風景の中を走るローカル線の写真、これが主役写真です。しかし、こうした写真は、背景が富士山であろうと日本海であろうと、風景の中に列車がいるという構成や距離感は似ています。ですから主役ばかり並んでも、メリハリはつきません。

脇役写真の例

主役にはならないけれど、テーマとなっているものの雰囲気を表している写真、それを脇役写真と呼んでいます。僕の例でいうと、主役写真のモチーフとなっている富士山が見えてくるまでの車窓風景とか、駅の風景です。脇役をうまく交ぜることによって、全体としてのストーリーが出てきます。

エキストラ写真の例

エキストラ写真とは、一見するとテーマと関係がないように見える写真です。僕の場合なら、鉄道やそれに関する物が写っていない写真で、例えば紅葉した葉っぱや目についた花などです。こうした写真が主役写真・脇役写真の間に入ると、けっこう“いい味”を出してくれます。

ストーリー展開

舞台には、主役級の人ばかりでなく、脇役、エキストラが必要で、それらが入り交じってストーリーが出来上がりますね。それと同じように、写真にも主役、脇役、エキストラの役を振り分けるのです。個々の写真の役を見分ける力が付いてくると、写真展の構成を考えるときに非常に役立ちます。

自分の写真を見直したときに「主役写真しかない」という人は、撮りたいと思った場所以外では、カメラをバッグにしまっていませんか? もっといろいろな物に目を向けてみましょう。脇役やエキストラ写真がないとわかれば、いろんなカットを撮ろうと思いますよね。写真の幅を広げるためにも、写真のキャラクターを理解するのは大事なことです。

ポイント!主役・脇役・エキストラでストーリーのある展示構成に。

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その2 プリントの"見せ方"のいろいろ

せっかく写真を展示するなら、見せ方にもこだわりましょう。僕がこれまでにチャレンジしてきた作品の一部をお見せしますので、自分のテーマに合うという人は、ぜひ参考にしてください。

透明な板を貼る

表面がきらきらと反射しているのが見えますか? これは、プリントの上に透明な板を貼ったものです。「裏打ち」ならぬ「表打ち」ですね(笑)。加工は業者さんに頼みました。このようにすることで、もともと透明感のある写真がさらにクリアーな印象になります。

特大サイズでプリントする

どんなサイズにもできるのがインクジェットプリントの楽しみということで、特大サイズにプリントしました。これは小湊鉄道で撮影したもので、「ゆる鉄」の写真展で展示したものです。このプリントは、エプサイトの「プライベートラボ」で僕が出力したものです。プライベートラボには大型のプリンターもあり、豊富に用意された用紙から好きなサイズでプリントできます。

キャンバス地にプリントする

キャンバス地の用紙(布)にプリントすることもできます。これはプレミアムサテンキャンバスというものです。僕はこれにプリントして、油絵用の木製額に貼りました。キャンバスに仕立てて写真を飾るというのも、ちょっとおしゃれかなと思います。

(注):プレミアムサテンキャンバスは大判プリンター用です。詳細は製品情報のページをご覧ください。

油絵風に加工する

1キャンバス地にプリントしたものを、さらに加工したものです。油絵用の「盛り上げ材」をプリント表面に塗りました。(透明に凸凹がつくことで)油絵のような質感が生まれて、楽しいですね。僕はこれを「印象派の写真」と呼んでいます。絵画と写真の中間の、新しいジャンルといえるかなと思います。

2キャンバス地ではなく普通のマット紙でも、同じように盛り上げ材を塗る加工ができます。優しい色合いの絵柄だけでなく、このようにメリハリのある絵柄でも、本当の油絵のように見えます。塗り方を変え、絵柄とは無関係な筆の運びにすると、また違った印象に仕上がって面白いです。

アイデアさえあれば、いろいろな見せ方ができます。このように"見せる"ことを意識すると、プリントや額装だけでなく撮り方までも大きく変わってくるものです。やはり写真は誰かに見せるために撮るものだと思います。みなさんも自分の好きな表現で写真を発表してもらえたらと思います。

ポイント!自由なアイデアで"見せ方" にも工夫を。

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