01制作に残された時間はどのくらい?
まずはスケジュールを確認!
[なによりもまず、それぞれの作業にかかる時間を見積もる]
写真展開催のチャンスが訪れたら、
最初にしてほしいことは「スケジュールの確認」です。
「え、そんなこと?」と思う人もいるかもしれませんが、何にどれくらい時間がかかるのか?を知っているかどうかで、慌てずに準備ができます。
だいたいの目安ではありますが、
- 1. 会場決定:半年~4カ月前まで
- 2. 展示写真のセレクト、展示プラン:半年~3カ月前まで
- 3. 紙選びやプリントワークなどの作品制作:2カ月前~1カ月前まで
- 4. 額装:1カ月前~2週間前まで
- 5. 展示以外の準備:1カ月前~2週間前まで
写真展開催時期から逆算して、これくらいのスケジュール感で進められると安心です。もちろん展示の構成を決めてからそれに合った会場を選ぶこともありますし、「こういう額装にしたい」というところから逆算して展示をつくることもあります。
いずれにしても、慌てず作品を作りあげるために半年くらい前から準備をはじめることをお勧めします。
02<3カ月前までに!>
セレクトや展示プランの大枠を決めよう
[見る人を意識した展示プランにできていますか?]
まずは「どの写真をプリントするか?」という作品のセレクトが決まらないと、作品制作をスタートできません。撮影した写真の中から、どんなテーマでどんな写真を展示するかをまずは考えていきましょう。
気を付けたいことは、展示する写真を「自分のお気に入り」だけで選ばないこと。特に御苗場のような多くの人が展示している写真展では、「相手にどう見えるか?」を徹底的に考え抜かれた写真に目が止まります。作品の完成度を上げるために、鑑賞者に「見てもらう」ことを意識し、客観的にセレクトしましょう。
簡単で効果的な方法は「モニター上でセレクトせず、紙にプリントする」ことです。サイズは、L判サイズなど小さくて構いません。プリントすることで、写真の比較や組み直す作業がしやすく、物理的に俯瞰しながら編集を進めることができます。
[実際に会場の広さや明るさを確認することも忘れずに]
また展示プランを考えるうえで、どんな会場で開催するのか知っておくことも重要です。時間があるなら、開催中の展示に足を運び会場を下見しておきましょう。確認のポイントは、
- 1. 展示スペース(広さ、設営条件 など)
- 2. 展示位置
- 3. 環境光(光の種類、明るさ、色 など)
- 4. 壁の色
など。できるだけ多く参考になるような情報を集めておくことが大切です。
「御苗場」は搬入日まで会場の確認はできないのですが、一般的なギャラリーは、別の展示が開催されている場合が多いので、展示の雰囲気を事前に確認して作品制作に反映させましょう。
03<2カ月前までに!>
サイズの決定
[展示サイズで変わる印象]
プリントサイズや額装で、写真から伝わるメッセージや印象は大きく変わります。
<大きいプリントの効果と特徴>
- 1. インパクトがある
- 2. 細部の描写を見せられる
- 3. 空気感、臨場感が伝わる
<小さいプリントの効果と特徴>
- 1. たくさんの写真で組むことでストーリー性を見せられる
- 2. 展示空間の中で、写真に集中させることができる
- 3. 額や余白のコントロールをしやすい
額装も、木製にするのかアルミフレームにするのか、自分の写真に効果的かをしっかり吟味しましょう。
初めての御苗場出展者でやりがちな失敗は「大きなサイズで、とにかくたくさん並べる」ということ。ひとつでも多くの作品を見せたい気持ちはわかりますが、その写真を見せるのに効果的なサイズや額装かどうか?は、冷静に見る必要があります。
またその逆に、
「展示会場では思ったよりプリントが小さく見えた」というのもよく耳にします。これを防ぐには、自宅シミュレーションがお勧め。手に取ってプリントを見るだけではなく、壁に貼ってみて実寸がどのくらいかを体験しておきましょう。
04<1カ月前までに!>
プリントの準備をしよう
[伝えたいイメージに合わせて「用紙」選びができていますか?]
展示では「紙」そのものが写真として鑑賞されることになります。
同じ紙でも「質感」や「紙の白さ」は大きく異なり、紙によって表現はガラリと変わります。
インクジェットプリントでの制作は、いろいろな種類が選べ、紙にこだわることができ、オリジナリティを出しやすくなります。御苗場では作品販売もできるので「モノ」としての写真の価値を見る人に感じてもらうためにも、自分の写真にいちばんしっくりくる用紙を選んで表現の強みにしたいものです。
いちばん最初は、
「光沢」「絹目調」「マット」などベーシックなものや、たくさんの紙が試せる「
ファインアート紙バラエティパック」などで、違いを比べてみましょう。
用紙について詳しく知りたい方はこちら
[プリントはモノづくり。仕上がりにこだわろう]
写真展は、ただ1点の「オリジナル」を見てもらえる場所。だから、プリントの色や明るさが思い通りに仕上がっているかは、最後までこだわって確認したいものです。
やみくもにレタッチしたり、ただ出力して終わらせるのではなく、正しいプリント設定や出力結果をよく観察して仕上げていきましょう。
レタッチしながらテストプリントをして作り上げる場合は、出力直後から色の確認ができる
エプソンプロセレクションシリーズのような
顔料インクを搭載したプリンターを使っている人が多いようです。
組写真や複数枚で展示する場合は、
1点1点の仕上げにこだわるよりも作品全体のトーンを揃えることを重視しましょう。
プリントの設定や色合わせについて詳しく知りたい方はこちら
05<2週間前までに!>
「作品アピール」のために
忘れてはいけない+α!
[自分の作品をアピールするための準備はしていますか?]
御苗場2019のジム・キャスパー賞、八木香保里さんの展示。額装された写真だけではなく、自分をアピールするために必要なものがいくつも用意されています。
〇「ポートフォリオ」を準備しましたか?
どんな鑑賞者でも、「この作品いいな」と展示を見て思った時に、「もっとこの人の写真を見たい」と自然に考えます。そのために置いたほうがいいのがポートフォリオ。
ファイリングしてブック形式のものを用意するか、プリントがそのまま入れられるボックス形式のものが一般的。
余白の取り方やレイアウト、ブック形式なら並べ方にも気を配りましょう。余白を調整してプリントをするときは、
Epson Print Layoutなどのプラグインアプリが便利です。
〇ステートメントを準備しましたか?
ステートメントとは作品をより見やすくするための「作品の見方」「作品の紹介文」です。鑑賞者の理解を深めるために、パネルやポートフォリオに入れるなどで用意しても良いでしょう。
「難しく考え長すぎないこと」や、「詩的すぎる説明ではないこと」がポイント。あくまで「紹介文」なので、読んでわかりやすいことを心がけましょう。
〇「プロフィールや名刺」を準備しましたか?
「展示をして終わり」ではもったいない! 展示を機に写真関係者と繋がれる可能性もあります。特に、「写真」を仕事にしたり、長く作品制作をしていきたいと少しでも思っている人は、
HPやブログ、SNSの情報などを含めた自己紹介のツールを用意して、「展示で完結しない」ための準備をしておきましょう。
以上のことを意識して作品制作に取り組むだけで、展示の完成度はかわってくるはずです。基本的なことですが、意外とできていない人が多い。逆に言えば、できていない人が多いので、この基本的なことをやるだけで他の人と差がつくはずです。ぜひ取り組んでみてください!
- (注)本媒体上の他者商標の帰属先は、商標についてをご確認ください。