初心者も経験者も納得!プロの流儀:ポートレート撮影&プリント(PART2)

良い写真への近道とは?プリント制作で写真の幅を広げよう

初心者も経験者も納得!プロの流儀:ポートレート撮影&プリント(PART2)

初心者も経験者も納得!プロの流儀:
ポートレート撮影&プリント(PART2)

良い写真への近道とは?プリント制作で写真の幅を広げよう

佐藤倫子先生のモデル撮影&プリント会レポートのPART2です。PART1では撮影会の様子を報告しましたが、PART2では実践的な撮影テクニックと、作品プリントの様子をまとめました。撮影の基本テクニックはPART1でご覧いただけます。
[PART1を読む](TEXT:桐生彩希)

01プリントは写真上達につながる

3時間の撮影が終わると、昼食を挟んでプリント制作と講評です。撮影会ではたくさんの情報が得られましたが、イベントはまだ折り返し地点。みなさん、セレクトやプリントに熱中しています。

使用するプリンターは、Epson Proselectionの「SC-PX1V」(以下、「PX1V」)。3台用意されていました。SC-1X1Vは、A3ノビサイズのプリントができるプロ・ハイアマチュア向けのインクジェットプリンター。顔料タイプ9色独立の「UltraChrome K3Xインク」を採用、深い青や引き締まった黒をはじめとした従来モデルを超える表現力を実現しつつ、大幅な小型化を実現したモデルだ。
プリント制作の様子。参加者だけでなく、スタッフも総出で作業を手伝う
プリント制作の様子。参加者だけでなく、スタッフも総出で作業を手伝う
用意されたプリント用紙は、光沢紙の「写真用紙クリスピア<高光沢>」(以下クリスピア)、半光沢紙の「写真用紙<絹目調>」(以下絹目調)、マット系ファインアート紙の「Velvet Fine Art Paper」です。それぞれA4とA3ノビのサイズでプリントを作ることができます。みなさん、作品をセレクトしながら、佐藤さんからのアドバイスやほかの参加者のプリントを眺め、どの用紙がよいかを考えているようでした。
プリントの作成は、スタッフに任せてもよいし、自らでパソコンを操作しても良い。「PX1V」は天板が透けて中が見えるが、つい排出口を覗いてしまうのはプリント作業のお約束
プリントの作成は、スタッフに任せてもよいし、自らでパソコンを操作しても良い。「PX1V」は天板が透けて中が見えるが、つい排出口を覗いてしまうのはプリント作業のお約束
参加者がプリントを作成している隙に、佐藤さんは自身の作品撮りに向かいます。参加者へのアドバイスや自身の作品を撮るため忙しく移動しながら、素早くプリントを作成。「PX1V」のユーザーということもあって、用紙の選定から出力まで迷いがありません。
NIKON Z 7II/NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/Mモード(F5.6、1/125秒)/ISO 1600/WB:オート/用紙:写真用紙クリスピア<高光沢>
出力した作品を確認。1点は「写真用紙クリスピア<高光沢>」、もう1点は「Velvet Fine Art Paper」を使用
本撮影会で撮影した佐藤さんの作品(モデル:高橋ゆり)
本撮影会で撮影した佐藤さんの作品(モデル:高橋ゆり)
NIKON Z 7II/NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/Mモード(F5.6、1/125秒)/ISO 1600/WB:オート/用紙:写真用紙クリスピア<高光沢>
Z 7II: https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_7_2/
本撮影会で撮影した佐藤さんの作品(モデル:塗木莉緒)
本撮影会で撮影した佐藤さんの作品(モデル:塗木莉緒)
NIKON Z 7II/NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S/Mモード(F5.0、1/160秒)/ISO 800/WB:オート/用紙:Velvet Fine Art Paper
佐藤さんは、プリント歴の長い写真家のひとりです。だからこそ、最新のプリンターの力を知ってほしいし、良さを伝えたいと話していました。
佐藤:昔のプリンターは、1枚の作品を作る前に何枚かテストを繰り返す必要があり、時間や手間もかかりました。そのため、プロの写真家ならともかく、アマチュアの方には少しハードルが高かったと思います。でも、「PX1V」は安定して動作して画質も良いため、そういった面倒がありません。本当にストレスフリーです。「プリントがラクに作れる」ということを感じてもらいたいし、プリントが出来上がったときの喜び味わってもらいたいですね。
今回のイベントは、ポートレートの撮影を学ぶというだけでなく、プリントする楽しみ、そしてプリントする意味を伝える場でもあります。

プリントは、写真が上達するために必要なものだと佐藤さんは続けます。
佐藤:プリントする意味は、プリントするときに写真をもう一回見返すことにあります。そして、プリントの反射光で写真を見るということは、モニターの透過光で見ていた写真と違うものになると知ることでもあります。写真をモニターの画面でしか知らないひとたちがプリントの色調や質感を理解すると、それをイメージしながら撮れるようになるわけです。そうすると、写真の幅が広がっていきます。プリントすると自分の写真をもっと見るようになります。写真を見ることは上達につながります。写真の上達は自分の写真にどれだけ向き合えるかがカギになるでしょう。

コンテストでプリントをよく見てるんですけど、作品は良いのにプリントがダメということがあります。その場合はやはり、落とさざるを得ないですね。そこが私にとって歯がゆいところです。でも「PX1V」は、作品の良さに見合った良いプリントをストレスフリーで制作できる。プリントが身近になることで「コンテストに出してみようかな」と思ってもらえたら嬉しいですし、プリントを通じて写真をもっと楽しんでもらいたいですね。
プリントの制作がラクになったと語る「PX1V」で作品を作成。今回の作品は、JPEGで撮影して、プリント用の色調整をせずにストレートに出力しているが、とても美しくプリントされている
プリントの制作がラクになったと語る「PX1V」で作品を作成。今回の作品は、JPEGで撮影して、プリント用の色調整をせずにストレートに出力しているが、とても美しくプリントされている

02和気あいあいの講評タイム

プリントを終えたタイミングで作品がテーブルに並べられ、講評会がはじまりました。佐藤さんは撮影シーンを思い返しながらそれぞれの写真を確認し、面白さ、目の付け所などを紹介していきます。

そして、複数のプリントを並べると、用紙ごとの色の違いについて解説をはじめました。それを把握しておけば、表現したいイメージのプリントも作りやすくなります。
佐藤:これがクリスピアで、これが絹目調。瞳の黒い色や洋服の色を見ると違いがよく分かりますよね。肌の色を基準に比べてみると、用紙ごとの色の違いがよく分かると思います。PX1V は顔料インクですが、クリスピアのような光沢紙でも、染料インクのような発色の良さが感じられますね。
講評をしながら、紙の種類による色の見え方の違いも解説。紙の白さだけでなく、黒の再現や服の色味など、チェックするべきポイントを紹介する
講評をしながら、紙の種類による色の見え方の違いも解説。紙の白さだけでなく、黒の再現や服の色味など、チェックするべきポイントを紹介する
佐藤:インデックスプリント(サムネイルを並べたプリント)を作れば、光沢、絹目調、マットそれぞれのインデックスプリント1枚を用意するだけで複数の写真が比較できます。写真が小さいと分かりにくいので、インデックスプリントに配置するのは4枚か、6枚が良いでしょう。それで色の出方とかを見比べてください。いきなり本番の用紙に大きくプリントすると、「あ~違った……」というときに切なくなりますよね(笑)
テーブルには作品がズラリ。参加者が見守る中、佐藤さんは並べられたプリントを吟味する
テーブルには作品がズラリ。参加者が見守る中、佐藤さんは並べられたプリントを吟味する
佐藤さんが各人のプリントに対して、コメントをしていきます。「ずいぶんよく色が出てますね」「このプリンターの特徴、美しい青が再現されています」「階調が豊かで肌がきれい」「これ女のひとじゃないと撮れなそう」「この表情とか面白いですね」――。

これらのコメントに参加者は一喜一憂。プリントの作り方、色の出し方などの解説も加わり、プリント講評会は進んでいきました。
みなさん佐藤さんが指摘するポイントに目を向け、解説に耳を傾け、そしてときには笑いを交えた和やかな雰囲気で進行する
みなさん佐藤さんが指摘するポイントに目を向け、解説に耳を傾け、そしてときには笑いを交えた和やかな雰囲気で進行する
そして、並んだプリントの中から、モデルを務めた塗木莉緒さんと高橋ゆりさんがそれぞれにお気に入りのプリントを選出します。いわば、塗木賞と高橋賞です。悩みに悩んで、たっぷりの時間をかけて選び出しました。
塗木賞(左)と高橋賞(右)に輝いた2作品
塗木賞(左)と高橋賞(右)に輝いた2作品。30点(6人×5枚)もの中から選び出すのはとても難しかった様子
塗木(モデル):これまでは撮影会の写真をプリントで見ることはそれほどありませんでした。プリントではどう写っているのかなと考えることは、モデルとしての新しい発見にもつながると思います。
ちなみに、塗木さんは撮られることは勉強になるとも話していました。自分の好きな顔の向きやポーズはあるけれど、そればかりになってしまうのでいろいろな向きを克服したい。だから、撮ってもらいながら自分も学ばせてもらっているのだと。

撮影会は、撮る側だけでなく、撮られる側も「魅せ方」を追求する場なのかもしれません。そして、互いが向上するためには、佐藤さんが教示するとおり、コミュニケーションをとることが大切なのだと思います。

最後は、それぞれに記念写真を撮り合って、長かった撮影会&プリント制作の終了です。
撮影3時間、プリント3時間という豪華な「モデル撮影&プリント会」も無事に終了
撮影3時間、プリント3時間という豪華な「モデル撮影&プリント会」も無事に終了。最後は、達成感に満ちた雰囲気で記念撮影

03参加者が語るリアルな声

撮影会の合間に、折をみて参加者の方々にお話をうかがいました。撮影会に参加してみたい方や、プリントや「PX1V」に興味がある方は、参加者のみなさんの声を参考にしてみてください。
○用紙の違いで写真の印象が違ってくる——小川優菜さん
小川優菜 ポートレート撮影は未経験でしたが、すごく楽しかったです。モデルさんもポージングや表情など頑張ってくださって、すごく撮りやすかったです。

プリント制作では、用紙で色や透明感が変わることに驚きました。写真の印象が大きく変わります。これまでは光沢でしかプリントしたことがなかったので、特に絹目調の柔らかさに魅力を覚えました。A3ノビのプリントの迫力も実感できました。自宅に「PX1V」がありますので、今日学んだことをさらに試してみたいです。用紙を買って帰ります(笑)
○考えて撮ることの大切さを知った——荻原みなみさん
荻原みなみ 今日、得られたのは経験値。長年写真を撮ってきた方と一緒に撮影できたのは、自分にとって価値のある時間だったと思います。撮り方の基本がいかに重要かわかりました。みんなで試行錯誤する感じがすごく勉強になったと思います。

さらに撮影後にプリントすることで、考えながら撮ることの大切さがわかった気がします。今後はプリントにも取り組むことで、最終的にどういう作品にしたいかを考えながら撮っていけそうです。
○大きなプリントを家に飾りたい——川崎達弥さん
川崎達弥 今日は自宅に飾れそうな写真をプリントしてみました。飾れる写真を意識してシルエット気味に撮って、それをA3ノビにプリントしました。自宅のプリンターでは2Lや大きくてもA4まで。それにしてもA3ノビは良いですね。プリントの重要性を知りました。いまのところ作品をプリントする機会は少ないのですが、そろそろ「PX1V」かな(笑)

今回、同じ写真をクリスピアを含む3種類の用紙で出力しましたが、面白いですね。自宅でよく使っているのはクリスピアです。他の用紙も含め、3種類がそれぞれしっかり違うことがわかりました。
○撮って出しのJPEGでOK——永田昌也さん
永田昌也 A4までは自宅でプリントしていますが、写真展に作品を出品する時など、A3ノビが必要になるとラボで出力していました。そうすると手元に届くまで仕上がりが分からないのが不安。やり直すと時間も費用もかかります。今回「PX1V」でプリントしてみて、自宅でA3ノビを出力できることは大きな魅力だと思いました。

しかも撮って出しのJPEGをプリントしただけなのに、モニターと色がほとんど変わりがないことに驚きました。普段はキャリブレーション済みのモニターとプリントの色が違うことに悩んでるのですが、今日はそれがありませんでした。「PX1V」はコンパクトな本体も良いですね。
○ひとりで撮っているとわからないことにも気づく——屋代大介さん
屋代大介 今日はプロの撮影やプリントに刺激を受けました。先生が撮ってる場面で自分ならどう撮るのか……それに、同じチームでも撮れた写真がそれぞれバラバラなんです。それを見て、「こういう切り口があるんだ」と思いました。ひとりで撮っていると分からないことですね。

今日は3種類の用紙を試しましたが、個人的には今日のような「ポートレートで自然光」なら絹目調がよいと思いました。爽やかな自然光ポートレートは絹目調、クールな写真はクリスピアと使い分けを試したいと思います。

「PX1V」は、描写の細かさや色のズレの少なさが印象的に残っています。JPEGで撮った写真をそのまま印刷しても、イメージとギャップが少なくて驚きました。
○旧モデルのプリンターと比較してみたい——大森秀樹さん
大森秀樹 エプソンの「PX-5600」をずっと使っています。さらにVelvet Fine Art Paperに出会ってからは、大事な作品はそれで出力しています。なので「PX1V」の存在が気になりますね。今日は「PX1V」でクリスピアとVelvet Fine Art Paperにプリントしたので、家に帰って「PX-5600」のプリントと比べてみるつもりです。きっと違うのでしょうね(笑)

今日は2台のカメラで1,000枚ほど撮りました。学んだことは、コミュニケーションの大切さ。モデルさんだけでなくて、周りの参加者さんともコミュニケーションをとるのが大事なんですね。
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