写真家・岡嶋和幸が語る、
作品の魅力を引き出す用紙選び

用紙によって作品の表情は変わる

写真家 岡嶋和幸さんスペシャルインタビュー 「コンテストに勝つための用紙のいろは」

写真家・岡嶋和幸が
語る、作品の魅力を
引き出す用紙選び

用紙によって作品の表情は変わる

コンテストに勝つためには、用紙選びが大きなポイントになります。ここでは写真家の岡嶋和幸さんに、実際に様々な用紙に出力した作品を元に「用紙へのこだわり」や、コンテストに勝つための「用紙選びのコツ」を伺いました。

岡嶋和幸(おかじまかずゆき)

写真家。1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。広告や雑誌などの写真撮影を担当するかたわら、世界を旅して詩情豊かな作品を発表。写真集「ディングル」ほか著書多数。主な写真展に「ディングルの光と風」「潮彩」「学校へ行こう!」「九十九里」などがある。2019年3月8日に写真集「風と土」を出版、同4月16日から28日まで同名の写真展を開催する。

写真家 岡嶋和幸さん

01SNS時代にあえてプリントする
ことの意義・重要性について

岡嶋さんは写真をプリントすることの意義についてどんなお考えをお持ちですか?
岡嶋:デジタルカメラは撮ってすぐに写真が見られて、その後もパソコンやスマホで見たり、インターネット経由で誰かに見てもらうことができます。プリントしなくても写真が楽しめるそのようないまの時代であっても、私は速いスピードで消費される写真ではなく、ゆっくりと時間をかけて見たり、見てもらったり、長い年月を経ても記憶に残るような作品づくりを行いたいと考えています。そのために大切にしているのが「もの」として存在する写真、つまりプリントにすることです。
透過光で見る液晶画面では、表示された画像はいまひとつ記憶に残りづらい印象です。反射光で見るプリントのほうが何かを感じたりなど伝わる情報量が多いように思います。プリントは見るだけでなく、手にすることで紙の厚さや重さ、質感が感じられるなどリアリティーがあります。写真を紙に印画する「ものづくり」としてのプリントが、子どものころからずっと楽しんできた写真の形であり、そのプロセスやクオリティーにこれからもこだわり続けたいです。
プリントづくりを充実させることで、自分自身の作品と向き合う時間が自然と長くなります。インターネットのような利便性はありませんが、手間暇をかけて仕上げたプリント作品を、直接見てもらうことによろこびを感じるのです。
SNS時代にあえてプリントすることの意義・重要性について

02コンテストに勝つための用紙に対する
考え方・選び方のコツについて

作品の魅力を引き出す用紙について、お考えをお聞かせ下さい。
岡嶋:フィルム写真の印画紙に比べて、インクジェット紙は種類が驚くほど豊富です。そのぶん多彩なプリント表現が楽しめます。使用する用紙によって写真の見え方や感じ方は違います。いろいろな種類の用紙を試してみると分かるのですが、同じ写真で比較するとその差は一目瞭然です。つまり使用する用紙によって鑑賞者への伝わり方が違ってくることになります。
用紙との組み合わせで幾通りもの見せ方や伝え方が可能になるのです。コンテストに応募するときには、いろいろ試した中からいずれかの用紙を選択することになりますが、その基準は写真のイメージや自分の好みということになるでしょう。私の場合はテーマに合った見せ方になっているかどうかという点を重視するのですが、特に画像処理を行わなくても、用紙を変えるだけでイメージにぴったりの仕上がりになったり、魅力的に感じられたりすることがあります。用紙によって調整内容が違ってくるので、まずは画像処理を行わないでいろいろな用紙を試してみるといいでしょう。
画像処理に自信がない人は無理をせず、まずは用紙の力に頼ってみることをお勧めします。用紙を効果的に使い分けるだけで、作品の良さを引き出すプリント表現が可能になるのです。
コンテストに勝つための用紙に対する考え方・選び方のコツについて
コンテストに勝つための用紙選びにコツはございますか?
岡嶋:用紙選びでは、写真との相性を探ることになります。前回使ってみて印象がいまひとつの用紙が、別の写真だとすごく魅力的に感じられたりすることもあります。お気に入りの用紙一辺倒にならないよう固定観念は払拭し、作品毎に複数種類の用紙を試してみるといいでしょう。
コンテストの応募作品の中には、調整のやりすぎなど画像処理で損をしてしまっているケースも多く見られます。画像処理は使用する用紙が決まってから、それに合わせて必要に応じて行うようにしましょう。撮影者は細部にこだわりすぎる傾向ですが、選者は作品全体の印象で評価します。そのためプリントからできるだけ離れて、客観的な視点で見比べて判断したり選択することが大切です。最適な用紙を見つけることができれば、必要最小限の調整だけで魅力的な作品に仕上げられます。自分の手でプリントして、自分の目で見て選ぶことで経験値が高まり、判断力が養われていくのです。いろいろな種類の用紙の特性、撮影や画像処理でそれぞれ注意しなくてはいけないことなどが着実に分かっていきます。
プリント上手は撮影上手で画像処理も上手。用紙選びなどプリントでの見せ方が上達すると、必然的に写真の内容も良くなって入賞率もアップするでしょう。
コンテストに勝つための用紙に対する考え方・選び方のコツについて2
Choose Point !
  • Point 1調整内容が違ってくるので画像処理は使用する用紙が決まってから!
  • Point 2画像処理をしなくても用紙を使い分けるだけで作品の良さを引き出せる!
  • Point 3プリントはできるだけ離れて見て客観的な視点で判断する!
  • Point 4たくさんプリントして経験値を高めて見る目も鍛える!
  • Point 5プリントでの見せ方が上達すると写真の内容も良くなって入賞率アップ!

03実践!今使っておきたい岡嶋さんオススメの用紙は?

使ったことがないファインアート紙を実際に買ってトライすることは、経験がない方にとってはハードルが高いことと思います。そんな中、そのハードルを少しでも下げようと、他社のファインアート紙が少しずつ入ったお試しパックが発売になります。どのように使って欲しいかお聞かせください。
岡嶋:まずは同じ写真で全ての用紙を試してみるのがお勧めです。用紙によって作品の表情が違って見えるなど、いろいろな発見があるはずです。実際の用紙選びでは、最初から選択肢を絞り込みすぎないことが大切です。似たような傾向の用紙ではなく、光沢系とマット系を組み合わせるなど、面質が異なる用紙でプリントして比較することから始めるといいでしょう。
どちらのタイプが作品に合っているのか方向性を見極めるのです。バラエティに富んだ用紙がセットになっている「ファインアート紙バラエティパック」は、このようなときにとても便利です。例えば光沢系が合っているようであれば、同じタイプのほかの用紙も比較検討してみましょう。一度に複数の用紙を試すのではなく、トーナメント方式で二者択一で絞り込んでいくのがポイントです。

「ファインアート紙バラエティパック」の作例

  • 1
    アワガミファクトリー社製 楮(厚口)白の作品

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    アワガミファクトリー 社製
    楮(厚口)白

    楮繊維を生かした美しく柔らかい質感で、和紙が初めてという方でも安心してプリントできます。カラーは優しい色づかいや調子の写真が向いているでしょう。やや温かみのある紙白で、優しい調子のモノクロ表現も楽しめます。

  • 2
    大豐和紙工業社製 伊勢和紙Photo 浄ら芭蕉の作品

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    大豐和紙工業 社製
    伊勢和紙Photo 浄ら芭蕉

    両面に印刷が可能で、滑らかな面と粗い面が選べる和紙です。それぞれに風合いがあり、2通りのプリント表現が楽しめます。どちらも試してみるといいでしょう。淡く黄みがかっていて、優しく趣のある仕上がりになります。

  • 3
    ILFORD社製 サテンフォト(旧名:ラスターペーパー)の作品

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    ILFORD 社製
    サテンフォト(旧名:ラスターペーパー)

    半光沢のRCペーパーで、色や階調の再現性に優れていて写真を選びません。紙の白さが特徴的で幅広く使えます。コントラストや彩度が高めの写真もしっかり表現できて、鮮烈な印象で目を引く仕上がりになるでしょう。

  • 4
    SiHL社製 メタリックパールの作品

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    SiHL 社製
    メタリックパール

    パールのように美しく透明感のあるメタリック系の光沢紙です。普通の光沢紙とは違い、見る角度を変えると光り輝き、写真が立体的に感じられます。金属やガラスなど光沢のある被写体の質感を表現することも可能です。

  • 5
    Hahnemuhle社製 フォトラグ 188gsmの作品

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    Hahnemuhle 社製
    フォトラグ 188gsm

    画材紙がベースのマット系の用紙です。面質はスムースで、深みのある落ち着いた雰囲気のプリント表現が可能です。コントラストや彩度が控えめの写真に向いているほか、滑らかな階調によるモノクロ表現も楽しめます。

  • 6
    ピクトラン社製 局紙の作品

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    ピクトラン 社製
    局紙

    独特の光沢感が魅力の和紙ベースの用紙です。少し黄みがかった紙白により、温かみのある仕上がりになります。引き締まった黒はモノクロ写真に最適です。彩度が低めのカラー写真なども雰囲気よく見せられて効果的です。

  • 7
    ピクトリコ社製 ソフトグロスペーパーの作品

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    ピクトリコ 社製
    ソフトグロスペーパー

    アート紙がベースで、上品で落ち着きのある微光沢の用紙です。自然な白さで、柔らかくて優しい感じの仕上がりになります。手触り感も好印象で、人物や動植物などしっとりとしなやかなに見せたい写真に向いています。

エプソンの用紙バラエティパックについてコメントいただけますでしょうか?
岡嶋:作品に合っているのかどうか分からない用紙を購入するのは勇気がいります。そのためどうしても今まで使ってきた用紙ばかり選びがちです。
「ファインアート紙バラエティパック」は、メーカーの垣根を越えた、幅広い選択肢の中からバラエティに富んだ用紙を試すことができます。
コンテストの応募作品の用紙選びにも向いています。用紙選びの楽しさを知ることができるほか、繰り返し使うことで、それぞれの用紙の特性を知ることにもつながります。そのようにして蓄積したノウハウが、ほかの市販されている膨大な種類の用紙を試したり、選んだりするときに役立ちます。用紙による多彩なプリント表現を楽しむ良いきっかけになると思うのです。

ファインアート紙バラエティパックのご紹介

エプソンプロセレクションシリーズでの作品作りに最適なファインアート用紙メーカーの
おすすめ用紙をセットにしたお得な用紙パックです。

エプソンダイレクトショップにて発売中

下記条件下で通紙を確認しておりますが、動作・品質を保証するものではありません。
紙の保管状況・使用環境などによっては、下記条件でも問題が発生する場合があります。
・片面印刷
・常温常湿環境(22~25℃、30~60%)下で印刷

各用紙についてのお問い合わせ先・サポート情報は下記「各用紙の詳細について」より各メーカーのホームページにアクセスしてご確認ください。

各用紙の詳細について(注1)

メーカー名 製品名 A4
サイズ
2L
サイズ
1

アワガミ
ファクトリー

楮(厚口)白

アワガミファクトリー社製 楮(厚口)白

(注2)
2

大豐和紙工業

伊勢和紙Photo
浄ら芭蕉

大豐和紙工業社製 伊勢和紙Photo 浄ら芭蕉の作品
3

ILFORD

サテンフォト
(旧名:ラスターペーパー)

ILFORD社製 サテンフォト (旧名:ラスターペーパー)
4

SiHL

メタリックパール

SiHL社製 メタリックパール
5

Hahnemuhle

フォトラグ
188gsm

Hahnemuhle社製 フォトラグ 188gsm

(注2)
6

ピクトラン

局紙

ピクトラン社製 局紙
7

ピクトリコプロ

ソフトグロス
ペーパー

ピクトリコ社製 ソフトグロスペーパー
  • (注)メーカー名・商品名をクリックすると、各メーカーのホームページで詳細を確認できます。
  • (注1)各用紙を使用されるうえでの諸注意については各メーカーのホームページでご確認ください。
    給紙・印刷は1枚ずつ行う事をおすすめします。
  • (注2)SC-PX7VIIをご利用の際は背面手差し用紙ガイドを使用して給紙してください。