浅野 久男 | Hisao Asano / 太田 昭生 | Akio Ota

【東京写真月間2022】地域との共生
浅野久男 『“Kai”を探して。 A Journey to Find “Kai” in Hokkaido』
太田昭生 『豊島30年 “産廃からアートへ”』

  • 会期:2022年5月27日(金)~2022年6月8日(水)
  • 時間:11:00~17:00
  • 休館:日曜日
    • (注)状況により会期・開催時間が変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。

本展は、公益社団法人 日本写真協会が主催する「東京写真月間2022」の国内企画展の一つとして、「東京写真月間2022」が掲げる今年度のテーマ「地域との共生」に併せ開催する写真展です。

浅野久男氏は北海道で活動する写真家です。この地で生まれ育ち、生活する立場だからこそ見えてくる北海道の姿を写真に撮り続けています。その作品からは私たちが観光で垣間見る北海道の一面とは異なる、確かな北海道の姿が見えてきます。

太田昭生氏は香川県の豊島を過去30年に渡り写真で記録し続けています。豊島は90年代の産廃不法投棄の問題を機に住人が一致団結し、今は「アートの島」として歩みを進めていることで知られる場所です。長い年月をかけて撮影された本作は、地域の歩みの貴重な記録として興味深い作品となっています。

両氏が地域に思いを馳せてその将来に眼差しを向ける本展にご期待ください。

写真活動と地域との共生 2つの物語 東京写真月間2022 スペシャルインタビュー

▶ 作品紹介
浅野 久男
『“Kai”を探して。 A Journey to Find “Kai” in Hokkaido』


江戸時代末期の探検家松浦武四郎は、「天塩日誌」の中で、アイヌ民族の古老に「カイ」という言葉の意味を尋ねたところ、「この土地に生まれたもの」という意味であることを教わったと記しています。このカイという言葉をヒントに松浦武四郎は「北海道」とこの地を名付けます。
北海道「開拓」の歴史と写真は密接な関係があり、アメリカ西部開拓と同じように黎明期の写真技術は「北海道」の変わりゆく姿を写真で記録する役割を果たしました。

現在の北海道においては人口の減少と経済の縮小が急速に進行し、2040年には北海道の半数以上の自治体で総人口が五千人未満になるといわれています。札幌以外の地域においては人口減に伴う商圏や自治体破産による住民サービスの維持困難、基幹産業としての第1次産業の衰退など、すでにその兆しは北海道を旅していると、静かにしかし着実に進んでいるのを感じます。

SNSの世界では「絶景」とたたえられた北海道の写真があふれかえっています。
それをみて北海道らしい光景と人々は言います。
しかしながら、それらの写真はとても空虚で、毒々しい色調の絵空事のような世界が広がっています。

絶景ではないごくありふれた北海道の普通の光景を旅の途中に記録してきました。
それは「この土地に生まれたもの」~Kaiを探す旅の記憶です。

▶ 作品紹介
太田昭生
『豊島30年 “産廃からアートへ”』


日本のバブル経済末期の1990年に豊島問題(産廃不法投棄)が起こり、高度成長の負の側面が豊島を襲った。豊島問題は官対民、都市対地方の対立でもあり、中坊公平氏という大きな力を得て、島民が一致団結し勝利した。
豊島の産廃は直島での処理が決まり30年近くかかり豊島より約91万トンが撤去された。まだまだ汚水等の問題も残っているが解決に向かっている。
この問題は日本社会に一石を投じた。それは行政の過ちを住民の力で変えたのだ。そして、島民の誇りとアイデンティティを取り戻した。
その後の豊島は「産廃の島」という風評被害から「アートの島」へと変貌しつつあり、瀬戸内国際芸術祭の会場ともなり、島内には観光客が増え活気を取り戻しつつあるようには見えるが30年で人口は半数近くの800人を割り込み急速に過疎化は進行している。
写真は、この30年間の記録と今の写真で、今後の島の将来を考えるきっかけになってくれることを希望します。

浅野 久男

浅野 久男 | あさの ひさお

札幌市出身。北海道を中心に、旅と風景を題材とした撮影活動を続ける。高校や大学などで写真講座を担当する。札幌・東京・ロンドンなど個展グループ展多数。札幌市写真文化振興事業・東川町国際フォトフェスティバル企画委員など「芸術と街づくり」などの活動も続けてきた。公益社団法人日本写真協会正会員、公益社団法人日本写真家協会正会員、日本旅行写真家協会正会員。NPO法人北海道を発信する写真家ネットワーク相談役、ピンホール写真芸術学会会員。

太田 昭生

太田 昭生 | おおた あきお

1950年 小豆島で生まれる。

元高校教師 公益社団法人日本写真協会正会員

<主な写真展>
1992年 「諦観の島-豊島」(銀座ニコンサロン)
1995年 「流離漂泊の俳人-尾崎放哉」(新宿ニコンサロン)(大阪ニコンサロン)
1996年 「高松Uni City」(銀座ニコンサロン)
1998年 「魂の島・大島」(銀座ニコンサロン)(大阪ニコンサロン)
2001年 「豊島10年」(銀座ニコンサロン)
2006年 「島が消える」(新宿ニコンサロン)(大阪ニコンサロン)
2014年 「溶融の時・大島」(銀座ニコンサロン)(大阪ニコンサロン)
<出版物>
2000年 「魂の島・大島」
2014年 「溶融の時」
<受賞>
1999年 酒田市土門拳奨励賞