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エプサイトギャラリー公募展・epSITE Gallery Award
柴田 慶子 写真展 「聞き写し、春日」
エプサイトギャラリーでは、2018年10月から2019年3月までの期間に開催された公募展の中から最も優れた展覧会として
柴田 慶子 写真展 「聞き写し、春日」 を選出いたしました。
1965年 生まれ。1996年 コニカ新しい写真家登場。
2008年「山と人の境界近く」(コニカギャラリー)08年と12年に岩波書店「世界」公募グラビアに掲載
まず、形のない心と物質性の間の表現といったものが上手く行われている点が素晴らしいと思います。「聞き写し、春日」というタイトルも面白いですね。民俗学のテーマとして取り上げられることの多い地域で伝承などを取材しての写真作品ということで、ともすると奇をてらった表現になりがちなテーマなのですが、地道な取材によるものなのか、上手く作品に昇華していると思います。表現されているのは、現実でも非現実でもない、といって全くのフィクションでもないという独特な世界です。観光的に単に“いいところだ”と思って写真を撮るのと違い、その土地に住んでいる人たち(ご老人たち)の話が介在した上で撮影されていることで、不思議なイメージが紡ぎ出されているのが興味深く、面白いと感じました。
民俗学的な調査や聞き取りの方法論を写真作品に持ち込んでいる点がユニークです。村のご老人たちの話(伝説や言い伝えなど)を聞き、そのインスピレーションを基にその話の世界を視覚化するという手法で撮られていますが、ただ単に、話の挿絵や説明のように写真を添えるのではなく、写真と文章がそれぞれ独立した世界を立ち上げている点が面白いと思います。写真もスキャニングなども取り入れストレートフォトではない作品を組み込むことで、現実と非現実がない交ぜになった民話の世界観に引き込まれます。写真展という空間の中で表現できることと別に、写真集という形でもぜひ見てみたいと思いました。
写真史の初期の登場人物は男性ばかりに見えますが、実際は少なからぬ女性作家が活躍して素晴らしい作品を残しています。例えば、世界初の写真集はタルボットの『THE PENCIL OF NATURE』だと言われていますが、実はそれ以前にアンナ・アトキンスという女性がサイアノタイプによる写真集(私家版)を出しています。今回は本賞初の女性受賞者となりましたが、そのことが、今後写真を目指す様々な層とエプサイトがリンクする1つのきっかけになればと思います。
今回はいつにも増して多様な表現が見られ応募者の背景などにも違いが見られたのが特徴的だった様に思います。稲田弥恵さんの脳科学の研究室とショウジョウバエの作品も科学と表現を考える上でも興味深かったですし、芦谷淳さんの農業と入植の歴史や過疎、離農といった問題をスタティックな視覚に表現していたのも面白かったです。ただ、その中でも、柴田さんは圧倒的な独自の世界観がありました。他の表現の追随ではない作品になっていたのは限界集落の村での聞き取りによる真摯な取り組みの賜物だと思います。今回の受賞を機に今後益々活躍の場を広がることを期待したい作家さんです。
また選考委員からは柴田慶子さん以外の各作品について、以下のような意見が聞かれました。
それぞれの作品性を追求して、さらなる飛躍をされることを期待しています。各出展作家の今後にぜひご注目ください。