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エプサイトギャラリー公募展・epSITE Gallery Award
エプサイトギャラリーは、2021年第1期公募展応募作品の中から、最も優れた作品として、山口 梓沙さんの「I KNOW IT'S REAL, I CAN FEEL IT.」を選出いたしました。
「I KNOW IT'S REAL, I CAN FEEL IT.」
山口 梓沙
Azusa Yamaguchi
1995年 東京都生まれ / 多摩美術大学卒業
2017年 キヤノン写真新世紀 優秀賞 清水穣 選
選考委員コメント
■上田 義彦氏 (写真家 多摩美術大学グラフィックデザイン学科教授)
山口さんの作品は、被写体やテーマ、取り上げる写真の絞り込み方などが適切で、伝えたいことがはっきりと伝わってくる。それでいて、作品の内容は個性的であり、これまでに見たことがないような独自の視点で被写体を捉えていて、どうして、こんな写真が撮れるのか?と不思議にさえ感じるものだ。展示プランでは、写真がさらに厳選されていて、どういった写真を選び、あるいは外すのかといった方向性をより明らかにした上で、作品の構成や配置、大きさといった具体的なプランが明確になっている。ほかの方の作品も多くはオリジナリティに富んだ作品であったが、展示の最終形態までを見通せているものは本作のみであったと思う。おそらく作者は、撮影している初期段階で、おおよそどういった作品になるかといった結論まで見通せている、力のある作家なのだと思う。
■速水 惟広氏 (T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO(東京国際写真祭)ファウンダー)
ほかの4名の方と山口さんの最大の違いは、編集力の高さだと思う。「何を撮り」「どれを選んで」「どのように組み合わせるか」といった作業は、写真撮影とは異なる編集の力が求められる。山口さんの場合、特に今回提出された展示プランにおいて、大胆に空間を使っていたのが印象的だった。アワードに応募されたポートフォリオの段階においても、タイトな編集がすでに行われていたが、展示構成案ではさらに作品枚数を絞り、空間を文字通り「間」として活用することで、少ない枚数でも見る人に訴えかける力のある展示になると感じさせるものだった。写真の視点や内容が個性的なこともあり、山口さんならではの面白い展示になると期待している。
第1回「epSITE Gallery Award」受賞
山口梓沙氏インタビュー
山口梓沙さんは、美術大学でグラフィックデザインを学ぶ中で写真やカメラに出会い、大学3年生の頃から本格的に作品の制作を開始したという。写真歴という意味では、決して長くはないが、山口さんの捉えた瞬間や、作品から垣間見える被写体への思いなどは独特で非常に魅力的だ。写真の構成力も極めて高く、それらが今回の受賞にも繋がっている。ここでは、日頃の写真活動のスタンスや今回の作品のテーマ、展示の構想や今後の活動などについてうかがった。
「誰もが目にしたことがあるもの」を意識しています
——山口さんの写真は、どこか親近感を感じさせる一瞬を切り取った、独特な作風が魅力の1つだと思いますが、作品制作で意識していることはありますか?
山口さん:身の回りの物や人をスナップ的に撮ることがほとんどです。自宅で撮ることも多いのですが、外で撮る場合は、街を散歩したり、親しい人と一緒にいるときに撮ることが多いです。私の場合、撮影しているときと撮影後にセレクト・編集しているときとで、考えることが大きく異なります。撮影時は多くのことは考えず、一人きりの精神状態で内省的に撮影を進めます。意識的にモチーフを選ぶとか、作品の最終的なテーマを見据えて撮るといったことはなく、その時の気分や生理的な身体感覚に合ったものを撮っています。一方、撮影した写真をセレクト・編集するときは、方向付けをして被写体を絞り込んだり、必要な修正を施します。被写体は、「どこにでもあるもの」「誰もが目にしたことがあるもの」「固有名詞の無いもの」などに意識を向け、できるだけ普遍的なもの(状態)をセレクトします。そうする事によって、鑑賞者の個人的な記憶に共感・共振することを意図しています。編集では、写真の隣り合う組み合わせや、前後の配置の順番、繰り返しの反復などを細かく吟味することで、一枚の写真がより豊かで、複雑に見えるようにと考えています。
——日頃、作品制作を行っていく上での目的はありますか?
山口さん:私は、作品を写真集にまとめるのを表現の軸にしています。自費出版のような形式で撮影から編集・装丁デザイン・製本まで行って、インターネットやイベントで販売しています。実は現在、印刷会社で印刷や製本の仕事をしながら、個人に依頼された写真撮影の仕事も行っています。そのため、作品制作と仕事が、ある意味上手くリンクし、相乗効果を生み出していると感じています。
日常の中で「私が見たいもの」を集めて凝縮した応募作品
——今回ご応募いただいた作品のテーマや内容は、どういったものになりますか?
山口さん:今回の作品は、明確な言葉としてのテーマはないのですが、これまで一貫している、私の写真を撮る上での視点や視線、言わば「私が見たいもの」を1つにまとめた作品です。身の周りにあるものを撮影することで新しく見つめ直す、といったことを日々続けていて、それらを凝縮してまとめました。
——エプサイトギャラリーの公募にご応募いただいた、きっかけを教えてください。
山口さん:エプサイトの公募は、2019年11月に実施された、宋 晨さんの展示を見たのがきっかけで知りました。こうした公募に参加することで、ゼロから個展を企画するよりもサポートも受けやすく、立地も良いなど、より良い展示ができそうだと思い応募しました。
写真集を空間に展開したようなリズム感のある展示を目指したい
——今回の展示に向けて、構想・構成やこだわっている点、挑戦したいことなどはありますか?
山口さん:まず、展示のタイトルは「I KNOW IT'S REAL,I CAN FEEL IT.」です。直訳すると「私は、それが本当だと知っている。そう感じることができる。」となります。というのは、ごく最近まで、作品を普遍的なものにしたいと思っていて、実際、固有名詞を写さないように意識していました。しかし、最近になって「普遍」という言葉に少し疑問を感じるようになりました。多くの人に共通するものを求めるのではなく、むしろ個人の視点で撮っているのだから“普遍的でない個人”を肯定して深めるほうが誠実ではないかと考えるようになったのです。そうしたことから、私だけが感じる「本当」を表現するために、考えたタイトルです。展示レイアウトは、まだ決めきれていませんが、私が作品の最終形態だと考えているのは写真集なので、エプサイトの空間を使って、本が持つ、ページが隣り合う事で生まれる効果や、余白の雰囲気などを、上手く表現できないか模索中です。今回展示する写真は、強弱なくどれも同じくらいの力を持った作品だと感じています。そうした特徴を生かしつつ、リズム感のある展示ができればと思います。
——今後の写真活動で目指す方向性や目標、チャレンジしたいことなどはありますか?
山口さん:今後も写真集を作ることが、活動の軸になると思いますが、これまで行ってきた小規模な自費出版によるものだけでなく、出版社から写真集を出してみたいというのが現在の目標です。仕事でも、現在行っているファッションやポートレートのほか、ドキュメンタリーの取材にも興味があります。写真を通して、いろいろな人に会ったり、知らない場所に行ったりできたらと思います。そして、多様な価値観に触れることで、自分の写真に対するスタンスにも影響し、作品のまとめ方やテーマなどが、少しずつ変わっていくのだと思います。色々なことが連なって、循環する中で、写真を撮り続けていたいです。
会期:2021年11月12日(金)~11月24日(水)
11:00~17:00 / 日曜休館