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エプサイトギャラリーは、2022年第1期公募展応募作品の中から、最も優れた作品として、大森めぐみさんの『Bright portraits あかるい写真』を選出、第3回 epSITE Gallery Awardとして決定いたしました。
第3回 epSITE Gallery Award
『Bright portraits あかるい写真』
大森めぐみ | Megumi Omori
2020年 多摩美術大学
美術研究科デザイン専攻博士前期課程を修了
2018年 「Shining in your eyes '18」Gallery916
2020年 「Shining in your eyes 2020」LE DECO
2020年 「Touch of Summer -夏の手触り-」ロロピアーナ銀座
2021年3月より雑誌「宣伝会議」のカバー撮影を担当
選考委員コメント
■上田 義彦氏 (写真家 多摩美術大学グラフィックデザイン学科教授)
今回の公募で選ばれた3作品は、いずれもユニークかつハイレベルであったが、なかでも大森さんの作品は、最も完成されたものだと感じた。本作では、タイトルにもあるように、被写体の“あかるさ”が感じられる瞬間を慎重かつ丁寧に撮影、セレクトされている。だが、被写体に当たる光が強ければ強いほど、あるいは“あかるい写真”であればあるほど、逆説的に「死」の印象が強くなる。そして、それこそ作者が丁寧に拾い上げた、作品の真の狙いなのだと気付かされる。写真1枚1枚をじっくりと見て行くことで感じられる深みのある表現は、作者ならではの個性でもあり、本作の最大の魅力となっている。
■速水 惟広氏 (T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO(東京国際写真祭)ファウンダー)
今回選ばれた3作品の作者は、いずれも20代だ。それだけに今後の伸びしろに期待する部分もあるのだが、そのなかで大森さんの作品は、「死生観」といった難しいテーマについて、作者なりのユニークな視点で表現している。全体構成も、手探りながらも狙いどころを外さずに真摯に撮影、セレクトされていて、見れば見るほど惹かれる作品だ。表現手法は日常を捉えた、いわゆるコンポラ写真の手法だが、逆説的で多少難解さもある。とはいえ、その難解さは、来館者がギャラリーでじっくり作品を見るということを前提にすると有効に機能して、作品の一貫性や強さなどの魅力が際立つだろう。
第3回「epSITE Gallery Award」受賞
大森めぐみ氏 インタビュー
大森めぐみさんは、写真好きな姉の影響もあって小学校中学年の頃には、写真撮影を楽しんでいたという。中学生になると、日常の「幸せな瞬間」を記録することの楽しさに気が付き、後に美術大学に進学して写真を専攻。本格的に作家活動を開始した。家族や友人を主な被写体とした作品からは、大森さんの死生観などにも繋がる、儚く、かつ切実な「幸せな瞬間」であることが伝わってくる。ここでは、大森さんに写真を撮る目的や今回の展示内容、今後の活動などについて伺った。
幸せな瞬間を記録し続けることで、身近な不安などを解消してきた
——大森さんは、家族や友人を主な被写体とされていますが、その目的は何でしょうか?
大森さん:私は4人兄弟姉妹の末っ子で年齢も大きく離れているからか、取り残されるような焦りが、幼い頃からありました。特に両親に対しては、それなりに高齢であり、いつまで一緒にいられるだろうかという、怒りにも似た不安な感情がありました。日常の写真を撮ることは、今の幸せな瞬間を記録しておくことで、そうした不安を少しでも解消する手段になっているのだと思います。作品の撮影は、フィルムカメラを用いていますが、1週間にフィルム1本分(36枚)位のペースで撮影し、自分で編集して半年に1冊くらいのペースで写真集にまとめるというのが、基本的なスタイルになっています。そうした一方で、写真ギャラリーでの本格的な個展というのは、今回が初めてになります。
——そうした大切な展示を行うにあたり、エプサイトの公募に応募したきっかけは何ですか?
大森さん:第1回「epSITE Gallery Award」を受賞された、山口梓沙さんの展示を拝見したのですが、エプサイトの立地やスペースの広さ、展示期間の長さ、告知パネルなどを含めたレイアウトの良さに惹かれました。これまで私の作品は私的な写真であって、人間の内面をえぐるようなインパクト重視の表現ではないため、コンテストや公募などには向いていないと感じていました。しかしエプサイトの公募展は、そうした作品にも目を向けて評価してもらえるのではないかと思い、応募しました。
撮影時の私の眼差しとキラキラした眩しい光を、写真をとおして共有したい
——今回の応募作品は、どういった狙いやテーマを持った作品でしょうか?
大森さん:まず、『Bright portraits あかるい写真』というタイトルは、元々は大学院生だったときに書いた論文のタイトルで、ここ7年間程で撮影した写真を編集したものです。内容(被写体)としては、前にも少し触れたように身の回りの家族や友人と、それに関連するものになります。そして、キラキラとして「眩しい」と感じた瞬間を逃さず撮ることで、これらの時間を忘れないでいられるようにといった、「祈り」に似た気持ちで制作した作品です。そのため、ずっと飽きずに見ていられるような、見返したときに「ちから」になってくれるような明るい写真で構成するようにしています。
——今回の作品を通じて伝えたいことは何ですか?見てもらいたいポイントはありますか?
大森さん:この作品は、基本的には私の身の回りにいる人々やもの、事象を捉えたものです。
しかしながら、私の「死生観」や日々感じている、隣人愛といったものも反映されていると感じます。そうしたことが、写真を見る方にも伝わるように、編集はできる限り客観視して行い、身近なことだと感じていただけるようにしています。私が撮影したときの眼差しと、感じ取った光を共有できれば幸いです。
——今回の写真展で挑戦してみたいことや、形にしてみたいことはありますか?
大森さん:これまで参加した企画展などは、基本的にプリントによる展示でした。そこで今回は、プリントとプロジェクターを組み合わせた展示を検討しています。
プロジェクターを使うことで、人が写真を見る速度をコントロール出来るのでは、と考えました。表示される速度を速めることで、じっくり見るプリントを「静」としたら、プロジェクターは「動」の部分を作り出せるのではないかと考えています。今回は、記憶が流れ込むように大量の写真に速さを持たせて投写したとき、見た方からどんな反応や感想をもらえるのか楽しみです。
学生時代から撮り続けている作品を、写真集にして出版するのが目標
——大森さんが写真表現に惹かれる理由、撮り続けている理由は何でしょうか?
大森さん:まず、写真表現に惹かれる理由は、撮影時にそこにある被写体の輝いている瞬間を記録できること。そして、写真を見返すことで何度でもその時のことを思い出せることがあります。加えて、撮影後の編集によって同じ写真でも印象が変化する点や選ぶ写真自体が変化する点にも惹かれます。次に撮り続けている理由については、子どもの頃から写真に残せるのに残さなかった(あるいは残せなかった)ということに不安を感じていて、写真を撮り続けないという選択肢が、私の中になかったから。よく言われることですが、まさに「撮らずにはいられなかったから」だと思います。このほか、大学や大学院でさまざまな作品や写真表現、自分にとっての写真のことをじっくり考える時間を取れたことも、写真を撮り続けたいと思う動機の1つになっていると感じています。
——今後の作家活動における目標や、挑戦してみたいことはありますか?
大森さん:日常撮っている写真は、家族の中でも母が写っているものが多いので、それらだけで写真集の制作か展示を行ってみたいと思っています。このほか、後世に残せるもの、あるいは作品制作の1つの区切りに、一般流通する出版物としての、写真集を作ることができたらというのが目標になっています。また、現在自分で作っている写真集は、自分で撮影して自分で編集してという工程を経ていますが、専門の編集者に編集してもらったら、どういった仕上がりになるのか、といったことにも興味があります。
会期:2022年11月25日(金)~12月7日(水)
11:00~18:00 / 日曜休館