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エプサイトギャラリー公募展・epSITE Gallery Award
心象風景などが多い応募作品の中で、ドキュメンタリー作品は目立っていた。
必死に対象を追いかけて一瞬も見逃すまいとした努力が見える。食らいつくような気迫があるし、セレクトを見直せばもっと面白くなりそうなので、支援したいと思った。ストーリーがよくわかるような、人生を感じさせる企画になれば理想的だ。いろんなふくらませ方があると思うので、期待したい。
山口和也が小松則幸というボクサーに初めて会ったのは2003年の2月。「写真を撮らせてほしいんです」と頭を下げる山口に対して、小松は山口の顔を一瞥しただけ。肯定とも否定ともつかない返事だったが、山口はジムに通い、小松にレンズを向け続けた。練習中も試合中も、いかなる場所でも。しかし二人の間に会話は一切ない。そんな関係が長く続いた。
「その頃はしんどかったですね。小松さんからしたら、新聞や雑誌の記者でもないのに、ひたすら写真を撮る僕って奇妙な存在だったんでしょうね。誰とも距離をおいている自分の存在意義がわからなくなったりして。3年くらいはそんな状況でした。
それでも撮り続けたのは、やっぱりきれいだったからなんです。いろんなものを削ぎ落としてリングに上がるボクサーという生き物が。また、彼らがみせる一瞬にも、僕は魅せられていたんだと思います。
なんというか、言葉じゃない“やりとり”の中に見える瞬間が美しくて。例えば試合中に対戦相手との間にある、間合いとか、読み合いというか・・・・・・僕たちには想像もできないような複雑な”対話”があると思うんです。その空気感が眩しいオーラのように感じられる瞬間があって、なんとかそれをつかまえたい、写真に残したいと。まあ、なかなか写りませんでしたけど。
そのうちに僕が撮ることを、彼が喜んでくれるようになってきたんです。少しずつ会話も増えていき仲良くなって、『世界獲ったら写真集やな』なんて話もしていたんです。
だけど一年前の4月13日、滝で修行中に亡くなってしまった。彼が亡くなって、死ぬとはどういうことか、今彼はどうしているか、と改めて考えました。そのとき、シャドーボクシングをしている彼の姿が見えたんです。
その姿に僕はパワーをもらい、この6年間に撮影した写真を初めて全部見返しました。そして今では不思議と、生前よりも小松さんの存在を近く感じるようになりました。
今回の展覧会が追悼のためではなく、彼が交わした美しい対話を多くの方に感じていただければと思っています。」