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エプサイトギャラリー公募展・epSITE Gallery Award
撮影者が被写体の菊地さんを尊敬していて、彼女を見たい、彼女に近づきたいという反応がそのまま写真に出ている。しかし被写体と馴れ合っているわけでもなく、ちょうどよい距離感で撮っていて、人を追いかける、ということの基本的な面白さが写っている。試合のシーンもいいがオフショットに印象的な写真が多いので、ボクサーとしての部分も含めた彼女の全体が見える写真展になるといい。
石渡知子は自分の写真を「ワインでいえば、ボトルの底にたまったおりのよう」と例える。確かに彼女の写真は明るくない上、どこか湿った印象がある。しかし、だからこそ、孤独なボクサーの日々と流された汗や涙を感じさせ、見る者に切々と訴える力を持っている。
「格闘技ってどんなスポーツよりも非日常的なところが好きです。昔からよく試合を観に行って好きな選手の写真を撮っていました。その中でも菊地さんは、誰よりもストイックで特にかっこよかったんです。
彼女は2005年11月に日本人初の女子WBC王者になったのですが、私はその年の6月から撮影させてもらっていました。試合はもちろん、バックステージやトレーニング、海外遠征にも同行しました。
非日常的と言いましたが、試合というのはいわば“ハレの日”なんです。リングの上の選手はスポットライトを浴びて輝いている。はじめは私も、それを観戦して楽しむ単なるいちファンとして撮影していました。
でも、菊地さんに密着するようになって、私の心境は少しずつ変わっていきました。数少ないハレの日までは、地道で過酷な日々の繰り返しだと知ったからです。数時間にわたって黙々とシャドーボクシングを続けたり、手の甲に大きな“殴りだこ”ができるほどサンドバッグを打ち続けたり、練習以外の時間でも我慢することばかりで。どんなに辛い思いをしても、報われるかどうかわからないのに。晴れ舞台の裏にはそうした時間があるのだと、間近で見ながら痛感しました。
2007年のアメリカでの防衛戦は、特に印象的でした。このとき、まだ日本ボクシングコミッションは、女子を公認していませんでしたから、日本の取材はまったくないんです。日本初の女子WBC王者なのにですよ。菊地さんは強烈なアウェーの洗礼をたった一人で受け止め、まさに孤独な戦いでした。
そういうときの菊地さんは、当然、すごくピリピリしていてカメラを向けるのもはばかられると思うほどです。でも、この貴重なシーンを私がしっかり残しておかねばと思いました。彼女にカメラを向けている私は、まったくの無心です。試合のときは特に、ファインダーから見える世界に没頭していて、事前に描いていたイメージなんて忘れてしまっています。
でもそもそも、きれいに撮ろうとも思っていません。きれいで誰にでもわかりやすい写真は新聞や雑誌が伝えるためにあるもので、私は自分が見てきた菊地さんをそのまま伝えたい。だから写真のレタッチもしませんし、プリントもストレートです。今回の写真展会場でも、そのときの空気感をそのまま見せられたらと思っています。
菊地さんはもう現役を退いていますが、日本の女子ボクシング界の第一人者で、歴史をつくってきた人です。この写真展で、彼女のことをたくさんの人が知ってくれたらうれしいです。」