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写真家 西野壮平氏に自身の作品づくりや、インクジェットプリントによる表現の可能性について語っていただいております。
こんにちは、写真家の西野壮平と申します。これから、作品制作にまつわるエピソードや活動を皆さまにご紹介できればと思っておりますのでおつきあいいただければ幸いです。
先日南アフリカ、ヨハネスブルグから帰国しました。
インターネットで「ヨハネスブルグ」と検索をすると“危険な街”や“世界一治安の悪い場所”などのキーワードがまず目に飛び込んできます。
ではその街から帰ってきた本人として、実際はどうだったかと言わせてもらうと、強ち嘘ではないと思う半面、インターネットの情報には惑わされてはいけないなという相反する感情があります。そのことについてはまたいつかじっくりお話する機会を持ちたいと思っています。
帰国して2ヶ月が経ち、ようやく作品制作も折り返し地点にさしかかってきました。
通常一つの作品制作には約4~5ヶ月程を要するのですが、今回はまず皆さんにその制作過程についてと、最近のいくつかのプロジェクトについてお話ししたいと思います。
まず12年前から継続して取り組んでいる作品「Diorama Map」について。
このプロジェクトで僕は世界のいろいろな都市を旅し、そこで出会ったものを撮影し、それらの写真を自身の記憶を元に一枚の地図的なイメージに再構築するという写真作品を作っています。
具体的に説明すると、ある都市に1ヶ月半ほど滞在し、カメラを手に毎日歩き回って街を俯瞰できる場所を探し、さまざまな場所から撮影します。
撮影する場所は必ずしも高い所からだけとは限らず、近年では路上のスナップも多く撮っているので撮影場所だけで言えば60~70カ所ほどになることもあります。撮影にあたっては現地の人々の情報や紹介など人づてのネットワークがとても重要になってきますが、もちろん飛び込み交渉も多々ありますし、あらかじめアポイントをとることもあります。国によっても全然反応は違いますし、毎回が試行錯誤です。
滞在中はその街を体感する為にも「歩く」という行為を何よりも重要視していて、歩けば歩くほどその街の内部を知ることできると思っています。
地元の人達がどのようなものを食べているのか、どんな音楽を聞いているか、その街にはどんな音が流れ、どんな匂いかなど、路上には歩いていると日々さまざまな発見があります。
そしてそれらの発見、出会いをひたすら写真に収めていきます。その街での時間が非日常から日常へと差し掛かる頃、僕は旅を終え日本に帰ります。
それが1ヶ月半という滞在時間を決めている理由でもあります。それ以前ではまだ旅は非日常であり、それより長くなると旅は日常になってしまうように思うのです。
この作品の撮影では通常35mmのモノクロフィルムを使用している為、旅から帰ってくるなり気の遠くなるような工程が待ち受けています。
フィルム現像、暗室でのプリント作業(コンタクトシートを作ります)、プリントしたコンタクトシートからすべてのコマを一枚一枚ハサミとカッターを使ってカットしていく作業です。
その作業が終わると、今度はカットしたすべての写真のピースをキャンバスに張り合せていきます。
そのコラージュが完成し、最後に張り合わしたものをスタジオで複写し、写真の印画紙に出力して初めて一つの作品が完成します。
この膨大な時間と工程を費やし、ようやく自分の旅が終了するような感覚です。
昨年の5月にオランダのアムステルダムに「Diorama Map」の制作のために滞在しました。
そして日本に一度帰国して完成したできたてほやほやの作品を昨年の9月に開催されたUnseen Photo Fairというフェスティバルにてインスタレーション形式で展示するという機会をいただきました。
これは普段ギャラリーや美術館などで展示している通常の額装された写真の展示ではなく、Goliga のIvan Vartanian氏と共に企画したもので、4m×4mに出力した巨大なアムステルダムの写真をはがきサイズのプリントにグリッド状にすべて分割、裁断して展示し、会場に来たイベント参加者にその中から好きな部分を10枚選んでもらうというものでした。
イベントが開催された4日間の中で、巨大な写真の集合の中から日ごとにさまざまな部分が無くなっていく様子を見るのはなんだか名残惜しくもあり、同時にエキサイティングでもあり、参加者となぜその写真(部分)を選んだのかについて彼らの話を聞くのはとても興味深かったし、彼らが自分の家や知り合いを写真の中に発見するなんてこともしばしばありました。
また、日本人である私の目を通して捉えたアムステルダムの印象とそこに住む現地の人達が感じるこの街の印象やそれらの違いについて話をすることもあり、このイベントを通して僕自身さまざまな発見がありました。