"撮れそうで撮れない瞬間"をシンプルな構図で的確に捉えた、非常にインパクトの強い作品です。しかもこのシーンは、肉眼で見ても、動画で撮っても面白さが伝わりにくい“写真ならではの作品”だと思います。被写体となっている女性の、なぜか気合いを入れてカメラを構えている様子や、なぜか牛に書かれた「E」の文字など、シンプルで情報量が非常に限られていながらも、際立った特徴があることでストーリー性が強く感じられる優れた写真であり、これぞまさしくプリントして見るのに最適な写真だと感じます。個人的にもプリントを部屋に飾って、ずっと見ていたいと思った作品。プリントが丁寧に仕上げられているのも素晴らしいと思います。

元々は縦位置の写真であるのを、横位置にプリントして見せている点が特にユニークな作品です。しかも、プリントの丁寧さ・上手さなども際立っています。見せ方については、流行の水鏡の写真なのですが、横位置にしたことで、森の上に木が立っていてさらに動物が乗っかっている……かのような錯覚による面白さや不思議さを誘発する点が目を引きます。さらに、ホワイトバランスや仕上がり設定などを巧みに駆使してオリジナルな色調に仕上げるなど、見せたい方向性が明確なのもこの写真の魅力です。白と黒の二重のフチが付けられたプリントも、非常に丁寧に仕上げられています。写真、見せ方、プリントなど、総合的な面で優れた作品です。