半導体製品の取り扱いについて
エプソンのCMOS LSI は、通常の使用時に予想されるある程度のストレスに対しては故障のないよう設計・製造され、また各種の信頼性試験などの実施により品質を保証しています。しかし、CMOS LSI をいかに高い技術管理のもとで設計・製造しても、適切に使用されなければ、期待する信頼性は得られません。
エプソンのCMOS LSI をより高信頼の状態でご使用いただくために、システム設計時や取り扱い時、また保管時には以下の事項について十分な注意をお願いいたします。
一般的な注意事項
設計上の注意事項
- 動作範囲でのご使用
半導体製品を用いる回路は、推奨動作条件の範囲で動作するように回路の設計を行ってください。推奨動作条件の範囲を超えた場合は、半導体製品の電気的特性の仕様を保証できないことに加え信頼性の低下につながることがあります。
絶対最大定格は各項目の一項目でも一時的にも超えてはいけない規格です。絶対最大定格を一時的にでも超えると製品の劣化や物理的な損傷を与える可能性があります。従って一時的にも絶対最大定格を超えないような回路の設計を行ってください。
また動作範囲内であっても半導体製品自体の発熱が大きい製品(製品個別の仕様書にて記載がある場合)については、電圧・電流・電力及び温度に対してディレーティングを考慮した回路の設計を行ってください。
- 制御入出力端子の扱い
入出力端子からスパーク、静電気放電などの雑音が入った場合は誤動作する可能性があります。また電磁波により誤動作する可能性もありますので、必要に応じて機器のシールドを行なう等、機器設計時に十分ご注意下さい。
- ラッチアップ現象
CMOS LSI は、電源あるいは入出力端子に過大な外来雑音が印加されるとラッチアップ現象を引き起こし、LSI の誤動作や破壊の原因となることがあります。この現象が生じた場合は、すぐに電源を切り、原因を取り除いた後、再通電して下さい。
- 静電気保護
端子には静電気保護回路を内蔵していますが、その能力を超える静電気が加わった場合には破壊されることがありますので、製品を取り扱う場合には充分な静電気対策を実施して下さい。
- 包装・運搬容器はプラスチック製を極力避け、導電性容器をご使用下さい。また製品のハンドリングについても充分に考慮して下さい。(リストストラップの使用等)
- はんだゴテや測定回路などは高電圧リークのないものを、必ずアースを取ってご使用下さい。
製品保管上の注意事項
保管条件
- 梱包箱に衝撃・振動・被水(水濡れ)を及ぼさないよう注意して下さい。
- 急激な温度変化により、水分の結露が起きないような環境で保管し、使用するようにして下さい。また、保管中は製品に荷重がかからないようにして下さい。
- 腐食性ガスのある環境や、ほこりの多い環境での保管は避けて下さい。
- 保管が長期間に及んだ場合は、端子の変色、はんだ付け性の低下等がないことをご確認の上でご使用下さい。
- 使用時に防湿袋の破れ・傷のないことを確認し、開封直後にシリカゲルが吸湿した状態ではないことを確認して下さい。
- 防湿袋開封後の保管条件、実装方法及び実装温度条件は、製品ごとに規定される弊社指定条件の範囲内にて管理して下さい。
使用環境条件
- 使用環境の注意事項
適切な温度・湿度の環境下でご使用下さい。湿度に関しては85%以内(結露なき事)としてください。また万が一LSIがちり・ほこり・塩気・SO2ガスのような酸性ガスなどに直接さらされる環境の場合は、素子のリード間のリーク、サビなどの原因となります。その場合は回路基板、LSIなどをコーティングするなどの対策を施してご使用下さい。
- 過度の機械的なストレスや急激な温度変化からの保護
機械的な振動や衝撃、継続的な応力、急激な温度変化などはパッケージのクラックやワイヤの断線を引き起こす可能性があるため避けて下さい。
光に対する注意事項
半導体素子は、光が照射されると特性が変化します。特性の変化による誤動作を防ぐため、ICが実装される基板及び製品について以下の考慮をして下さい。
- 実使用時にベアチップの遮光が考慮された構造となるように設計及び実装を行なってください。
- 検査工程では、ベアチップの遮光が考慮された環境設計を行なってください。
- ベアチップの遮光は、ベアチップの表面・裏面及び側面について実施してください。
パッケージ品
実装時の注意事項
-
機械的ストレスからの保護
実装基板への実装工程中に受ける機械的ストレスは、できる限り小さくして下さい。
- 表面実装パッケージのリード保護
表面実装パッケージは、基板のパターンとパッケージのリードとが面接触ではんだ付けされます。取り扱いに際しては、リードの変形を招くような力が加わらないように細心の注意をお払い下さい。
- パッケージ表面の信号線保護
一部のパッケージには表面に信号線の一部が露出する構造を持つものがあります。このような製品についてはご使用の際にパッケージが汚染等を受けないよう十分にご注意下さい。また素手による製品の取り扱いは避けて下さい。
はんだ付け方法
-
赤外線/温風/赤外線・温風併用リフロー方式によって実装して下さい 。
酸化の影響を抑制し、また濡れ性を改善するために、窒素雰囲気リフローをお奨めします。
- パッケージへの熱ストレス
負担を低減させる観点では、可能な限り低温で、かつ短時間でのはんだ付け処理を推奨いたします。
この点を考慮頂いた上でお客様におかれましては、はんだ付け状態、実装後の信頼性等に関しましては最適な状態となることを充分ご確認の上、実装プロファイルの設定をお願い致します。
-
複数回数リフローを実施する場合は各パッケージ保管ランクの許容保管期間内に行って下さい。
( リフロー回数は2回までとして下さい)
-
手はんだ付け方
はんだごてを用いた手はんだ作業は、以下の条件にてお願いいたします。
こて先最大温度 |
時間 |
回数 |
350℃ |
最大5秒以内(端子あたり) |
2回以下 |
※はんだごてがパッケージボディ等、リード部以外の部分に接触しないよう注意してください。
-
フロー法
フローはんだ付けは推奨しません。
保管上の注意事項
面実装型パッケージの吸湿性と信頼性
面実装型パッケージは使用しているレジンの性質上吸湿しやすく、室内放置でも時間の経過とともに吸湿が進行していきます。吸湿したままはんだリフロー炉に投入すると、レジンにクラックが入ったり、レジンとフレームの密着性が劣化したりすることがあります。したがってリフローを行うまでの標準的な面実装型IC の保管条件は、指定範囲を超えないようご留意下さい。
標準的面実装型IC パッケージの保管条件および保管期間
防湿梱包開封前
防湿梱包状態 |
保管条件 |
許容保管期間 |
開封前 |
30℃・85%RH以下 |
12ヶ月以内 |
防湿梱包開封後
保管ランク・保管条件一覧表
保管ランク |
防湿梱包開封後の保管条件 |
許容保管期間 |
MSL2 |
30℃・70%RH以下 |
12ヶ月(1年)以内 |
MSL2a |
30℃・70%RH以下 |
1ヶ月以内 |
MSL3 |
30℃・70%RH以下 |
168時間(1週間)以内 |
MSL4 |
30℃・70%RH以下 |
72時間(3日)以内 |
- 開封後の保管条件は製品毎で保管ランクの指定が異なりますので、「5-2 項 パッケージラインアップ」をご参照下さい。
パッケージ ラインアップ
標準的面実装型IC パッケージの乾燥
面実装型IC パッケージの乾燥方法
防湿梱包開封前の保管期間が過ぎてしまったもの、または保管期間や保管条件が不明で吸湿が懸念されるものについては、リフロー作業前にパッケージを乾燥することをお奨めします。これによりリフロー時の熱ストレスによるクラックなどの不具合を防止することができます。乾燥時には、以下をご参照下さい。
乾燥温度 |
時間 |
回数 |
125±5℃ |
20時間以上36時間以内 |
2回以内 |
防湿梱包開封後の保管期限を超えてしまったとき、あるいは不明になったときなどは、リフロー作業前にパッケージ乾燥することをお勧めします。
ベーキング実施後から実装までの保管条件は、上記保管条件と同一です。
※出荷形態がテープ&リールの場合、耐熱性のトレイ等に移して乾燥処理を実施してください。
ベアチップ品取扱い注意事項
取り扱い全般
- ベアチップ製品は、通常の製品と比べ、取り扱い方法によっては、品質信頼性を損なう恐れが高くなります。
- ベアチップ製品の表面には保護膜を施していますが、内部配線の保護を目的としており、外部からの衝撃より保護するものではありません。
- 空気中の水分・ホコリ等の外部環境や組み立て時の取り扱いによっては、不具合を招く結果となりますので、十分な注意をお願いいたします。
- お客様にて、故障を検出する試験やスクリーニングを実施するなど、品質・信頼性についても十分な検討をお願いいたします。
梱包
ベアチップ製品の出荷時には、搬送時の飛散を防ぐため、専用トレイに収納を行ないトレイブロック単位にテーピング留めの上、帯電防止袋に収納・封止を行なっています。外部からの異物付着を避けるため、必要以上に容器の開閉を行なわないでください。また容器を開封した状態での放置は行なわないでください。
ベアチップ品の保管上の注意事項
- 開封前後の保管期間は、下記条件にて、最大12ヶ月とさせていただきます。
- ボンディングパッド表面の変質によるボンディング性劣化を避けるため、開封後は、速やかに実装完成させて下さい。
ベアチップ品の保管条件および保管期間
防湿梱包状態 |
保管条件 |
許容保管期間 |
開封前 |
35℃以下、RH80%以下 |
6ヶ月以内 |
開封後 |
30℃以下、RH80%以下 |
30日以内 |
露点-30℃以下のドライN2中 |
6ヶ月以内 |
ベアチップ製品の実装時の注意事項
- ベアチップの実装は、汚染された雰囲気・物質にさらされないクリーンな環境で行なってください。
- ベアチップのピックアップ・ダイボンド時には、ベアチップ用コレットを使用してください。コレット部に異物が付着した場合、ベアチップ表面に傷が連続的に発生する等の工程不良が発生する可能性があります。ベアチップ表面へ接触する構造のコレットを使用する場合は、定期的にクリーニングを実施してください。
- ベアチップ状態での洗浄は避けてください。
- 実装時は、十分な静電気対策を実施してください。
- ベアチップ裏面は絶縁して使用してください(製品個別の仕様書にて記載がある場合は、記載内容に従う)。
使用部材
封止樹脂を使用する場合は、吸湿によるパッド腐食、温度変化による樹脂応力を避けるため、「半導体グ
レード」の製品を使用してください。その他使用部材につきましても、同様の対応をお願いいたします。
ウエハ、チップ品取扱いマニュアル
ウエハ製品 取り扱いマニュアル
ベアチップ製品 取り扱いマニュアル