パワーMOSFETとは?
用途・特徴・構造と動作原理、MOSFETとの違い、選び方を解説

パワーMOSFETとは?概要と用途

パワーMOSFET(英語:Power Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)とは、比較的大きな電力を扱えるMOSFETのことを言います。従来のバイポーラ・トランジスタに比べて、スイッチング速度が高く、低圧領域(~200V程度)においてオン抵抗が低い点が特徴です。そのため、スイッチング電源やDC-DCコンバータ等で広く使われており、主な用途としては、スイッチング素子で使用、制御素子で使用、DC-DCコンバータで使用といった用途があります。

パワーMOSFETの特徴・特性

パワーMOSFETの特徴としては、下記の3つの特徴があります。


  1. 特徴1:バイポーラトランジスタのように電流制御ではなく、ゲート・ソース間の印加電圧によって制御する電圧制御デバイス
  2. 特徴2:バイポーラと比べ高速なスイッチング動作が可能
  3. 特徴3:DMOS構造を用いることで、大電流デバイスに必要な低オン抵抗化と高耐圧化を両立し、高集積なICを実現可能

パワーMOSFETの構造・動作原理

パワーMOSFETの代表例としてDMOS(Double-Diffused  Metal Oxide Semiconductor)が挙げられます。下記図にNチャンネルDMOSの構造を示します。

ASICの設計・開発について

DMOSはシリコン基板上に形成されたN型のエピタキシャル層の表面にPボディと呼ばれるP型の層とソース端子となるN型の層を2重で拡散した構造となります。CMOS(Coplementary Metal Oxide Semiconductor)に比べ単位面積あたりのオン抵抗を小さくでき、スイッチングが高速に行えるなどの特徴があります。

次にNチャンネルDMOSの動作について説明します。動作としてはCMOSの動作と同様にソースに対し正の電圧をゲートに印可するとゲート下にチャネルが形成されDMOSがオン状態となりドレインからソースに向かってドレイン電流が流れます。ソースとゲート電圧を同電位にすることでDMOSはオフ状態となりドレイン電流は流れなくなります。

ASICの設計・開発について

パワーMOSFETとMOSFETの違い

パワーMOSFETとは、大電流を扱うパワー素子という意味で、大電流に対応できる様に設計されたものを言います。MOSFETは、大電流が不要な信号のスイッチングなどの回路に使われます。

パワーMOSFETの種類

パワーMOSFET の構造は縦型と横型に分類され、縦型構造はプレーナ型とトレンチ型に分類されます。

縦型は、素子の縦方向に電流が流れるためオン抵抗が小さくでき、かつ、集積度も高くできます。横型は、素子の表面の部分に電流が流れるため、オン抵抗が大きくなり、また、集積化や高耐圧化が難しくなります。

パワーMOSFETには、Nチャネル品とPチャネル品があります。その違いは電流の流れる向きにあります。Nチャネル品では、ドレイン電極からソース電極に向かってシンク(吸い込む)する方向に電流が流れ、Pチャネル品は、ソース電極からドレイン電極にソースする(吐き出す)方向となります。

パワーMOSFETの選定方法・選び方「3つのポイント」

パワーMOSFETには様々な特性がありますが、選定する場合に特に考慮すべき基本特性として、以下が挙げられます。

  1. (1)定格電圧・定格電流
  2. (2)オン抵抗
  3. (3)SOA(Safety Operation Area)

(1)定格電圧・定格電流

使用する条件がデータシートの定格(電流・電圧などの動作範囲)内であることを確認する必要があります。定格範囲外となった場合、最悪MOSFETが破壊してしまう可能性があります。そのため、使用条件で起こり得る最大の電流・電圧がどの程度かを把握し、定格がそれ以上であるものを選定する必要があります。

(2)オン抵抗

オン抵抗とは、MOSFETがオンしているときの、ドレイン - ソース間の抵抗値を指します。

(1)の定格のみを考慮すると耐圧が高い方がよいと考えるのが普通です。しかし、MOSFETの耐圧が高いほどオン抵抗が高くなる傾向があるので、単純に耐圧が高いものを選べばよいというわけではありません。パワーMOSFETの選定で重要となるオン抵抗は、定格以外にもさまざまな特性と関連があるので、選定には注意が必要です。

一般的に、オン抵抗を低くしたときの他の特性への影響として、以下のようなものが挙げられます。


  1. オン抵抗が低い -> 基板を小さくできる(メリット)
  2. オン抵抗が低い -> 電力損失が小さくなる(メリット)
  3. オン抵抗が低い -> MOSFETの耐圧が低くなる(デメリット)
  4. オン抵抗が低い -> MOSFETのサイズが大きくなる(チップ単価アップ)(デメリット)
  5. オン抵抗が低い(サイズが大きい) -> 容量は大きくなり、電力損失が大きくなる(デメリット)

このようにいろいろな特性への影響があるため、用途に合わせ他の特性との関係を見ながら、最適なオン抵抗値を選定する必要があります。

(3)SOA(Safety Operation Area)

パワーMOSFETには、SOAと呼ばれる安全動作領域というものがあります。このSOAは純粋なデバイスの特性のみではなく、パッケージの熱抵抗からも影響も考慮した考え方です。熱抵抗は、1Wあたりに上昇する温度の規程ですが、そのMOSFETの消費電力からの温度上昇を表します。


一方、MOSFETには動作温度範囲の規程があり、通常ジャンクション温度として記載があります。そのジャンクション温度を超えて使用することはできないので、温度上昇してもその範囲内であることを確認する必要があります。

パワーMOSFETの小型化・安全機能強化を実現する「DMOS-ASIC」とは?

DMOS-ASICは、基板の面積を占有している電力用半導体素子、専用IC、高耐圧・電流部を1チップ化することで、部品点数削減・省電力化・故障率低下を可能にします。

「DMOS-ASIC」でパワーMOSFETの小型化が実現できる理由

複数のディスクリート部品を使用する場合、部品点数が多く、実装面積が大きくなります。その結果、省スペース化・小型化・薄型化が困難となります。さらに、部品点数および実装基板面積大によるコスト増やディスコンの可能性も懸念されます。しかし、下記のようにDMOS-ASICで複数部品を1チップ化することで、お客様のロジックによる最適制御と同時に小型化・省スペース化を実現することが可能です。

DMOS-ASICの提供する価値

「DMOS-ASIC」でパワーMOSFETの安全機能が実現できる理由

大電流製品をディスクリート部品で実現すると、過電流検知、加熱検知などの安全機能を実現する際、部品数が増え、制御も難しくなります。しかし、DMOS-ASICではパワーMOSFETであるDMOSとロジック回路を混載できるので、過電流検知、加熱検知などの安全機能をお客様の仕様に合わせて容易に実現できます。

「DMOS-ASIC」の詳細資料

弊社では、自社製品(プリンターなど)において、高耐圧・大電流に対応したDMOSプロセスによるICを数多く開発・提供し、そのノウハウと多くのIPコアを蓄積しています。その蓄積されたIPコアを組み合わせることにより、フルカスタムICに比べ開発期間の短縮、開発費の削減が可能になります。産業分野を中心に約40年にわたって支援してきた実績と経験のあるASIC開発手法で長期安定供給、柔軟な設計対応でお客様の製品化をサポートします。


DMOS-ASICの『S1X8H000/S1K8H000シリーズ』は、0.15μmのCMOSとDMOSの混載プロセスで高耐圧・大電流に対応しつつ、低消費電力を実現するための制御回路を搭載可能なASIC(エンベデットアレイ/スタンダードセル)です。


本製品は、IO-Linkなどの通信送受信回路、高電圧スイッチ、スイッチング電源、制御機能を内蔵したモータードライバ、モーター駆動用Hブリッジなど、幅広い分野に最適です。


エプソンの「DMOS-ASIC」の詳細については、WEBページ、 または下記のPDF資料をご参照ください。



DMOS-ASICの「S1X8H000/S1K8H000シリーズ」
概要・仕様・システム構成例がわかるPDF詳細資料

高耐圧・大電流対応DMOS+ASIC IP仕様とソリューション案
DMOS-ASICの概要、IPロードマップ、仕様、システム構成の例(外付けディスクリートを取り込む例、小型化を必要とする製品構成の例、バッテリー駆動を有する製品構成の例、IO-Linkシステム構成例、BLDCモータ制御システム構成例)をご紹介したPDF資料です。