山形県の北西部、庄内地区に位置する酒田市。北に鳥海山、南に出羽三山といった山々に囲まれ、西には日本海をのぞむ。庄内平野を流れる最上川が肥沃な土地を育み、日本有数の米どころとしても知られる。そんな酒田市は、東北でいち早くPaperLabを導入した自治体でもある。導入に至る経緯や現在の運用状況、さらに、PaperLabを通じて酒田市が目指す「環境循環型社会」の未来図について、お話しを伺った。
個人情報を含む機密文書を独創の技術で完全に抹消
多くの自治体にとって、市民の重要な個人情報を含んだ機密文書の処理は大きな課題となっている。近年、マイナンバーの導入により、いっそう厳重なセキュリティー管理が求められ、酒田市もそれらの対応に多くの労力を割いてきた。
これまで、どういったプロセスで使用済み用紙の処分をされていたのでしょうか?
永田氏:全庁的には、月に1度、外部の専門業者に委託し、使用済みの文書の焼却処分を行ってきました。ですが、市民部市民課の取り扱う文書に関しては、マイナンバー情報をはじめ、多くの重要な個人情報が含まれているため、その処理には、より厳重な配慮をする必要がありました。そのため、委託する外部業者が焼却処分を行う際には、完了するまで職員が立会って監視を行うといったプロセスを踏んできました。
庁内で処分する文書も、毎日、課ごとに複数台のシュレッダーにかけ細かく裁断するのですが、事前に紙を分類する手間などもあり、かなりの労力がかかっていました。裁断された紙は空気を含んでかさばるため、保管場所の確保にも頭を悩ませていました。
そうした課題の解決に向けて、PaperLabの導入をお考えになったのですね。 永田氏:機密文書をその場で完全に抹消し、紙を再生利用することができるという点に大きな魅力を感じました。酒田市では、環境保全や廃棄物対策の推進として「循環型社会への実現」を目指し、ごみの減量化や再生利用の促進に向けて取り組んでいます。こうしたニーズに合致すると確信し、PaperLabの導入を決めました。
2017年5月に導入されてから、約1年半がたちました。現在は、どのように運用されているのでしょうか?
永田氏:毎日閉庁後、1階の6つの部署をメインに、処分すべき2000枚の紙を回収します。特に、市民課や福祉、介護保険といった部門は、個人情報を扱うため、処分する紙の量も多くなります。とはいえ、受理できる量にも上限があるため、機密情報が掲載されたものを優先的にPaperLabに入れ、それ以外はシュレッダーで処分するなど、その都度対応しています。今後は、全庁的な取り組みとして広げていきたいと考えています。
実は昨年まで、回収した紙は退庁前にPaperLabへ投入して翌朝に再生紙ができているという仕組みで運用してきましたが、現在は、実際に紙ができる様子を市民の方にも見ていただこうと、機械を動かすのは翌朝の開庁後に変更しました。
「捨てる」から「再生する」へ
職員の環境に対する意識がより高まった
現在、多くの企業でペーパーレス化が急速に進んでいるが、老若男女の市民を抱える自治体にとって、紙の文書を必要とする場面は、まだまだ多い。そうしたなかでも、PaperLabを活用することで、環境に配慮しながら「循環型社会」を目指すことができるのでは、と期待を寄せている。
導入後、職員の皆さまの行動や意識に変化はありましたか? 永田氏:“モノを捨てる”ことへの意識が変わってきたという声を聞きます。これまで、使用済みの紙は、「捨てる」という選択肢しかなかったところに、PaperLabを使って「再生させる」という選択肢が生まれた。環境への意識が高まるきっかけになっていると感じますね。
「PaperLab」を広く市民に開放し、
環境問題への取り組みをPR
酒田市役所では、市民の目に触れやすい場所にPaperLabを設置。出来上がった再生紙は誰でも自由に持ち帰ることができる。こうした取り組みは、市民とのふれあいや対話のきっかけを生みだしているという。
導入当初は、別の場所に設置される予定だったと聞きました。 永田氏:機密文書を扱うこともあり、当初はバックヤードに置こうという意見もあったのですが、「広く市民の方々に見ていただきたい」という市長の熱い思いから、急きょ入り口から見える場所へと移動しました。広く市民に開放することにより、環境問題への意識を高めていただく「入口」になれば嬉しいですね。
市民の方の反応はいかがでしたか?
永田氏:最初は、「なんだろう…」という感じで興味深げに近寄ってくる方が多いようですね。そうした場面で、職員がPaperLabの仕組みを説明したり、市役所の環境に対する取り組みをお話ししたりと、市民の方との対話やふれあいのきっかけづくりにもPaperLabがひと役かっています。
「紙が分厚くて触り心地が良い」「風合いが優しいね」など、紙の品質を褒めてくださる方が多いです。出来上がった再生紙は、自由にお持ち帰りいただくことが可能なのですが、一度使った方は、大抵リピーターになられるんですよ。さらに、自分たちの個人情報がのった文書が、こうした形で確実に消滅するところを見ていただくことで、市の情報セキュリティー対策への信頼を高めることに繋がるのでは、と考えています。もちろん、我々にとっても、お預かりしている大切な個人情報をしっかり廃棄できることは、気持ちの上でも随分負担が減ります。
出来上がった再生紙は、どの様に活用していらっしゃるのでしょうか。
永田氏:主に、市民の方との交流に使っています。昨年、子供たちが社会科見学に来た時は再生紙で作ったノートを配り、好評でした。
また、昨年から市内の酒田港に「ダイヤモンド・プリンセス」や「コスタ ネオロマンチカ」といった大型クルーズ船が寄港するようになり、多くの外国人観光客が訪れるようになりました。その際、町をあげておもてなししようと、PaperLabで作ったウエルカムカードに折り紙の鶴を添えて配ったところ、大変喜んでいただきました。
再生紙の活用により、さまざまな交流が生まれているのですね。 永田氏:酒田市では、毎年、市内の企業さまや学校などが様々な催し物を行う「さかた産業フェア」というイベントを開催しているのですが、今年は、エプソン販売さんのブースで「再生紙で作る紙飛行機教室」を予定しています。高品質で温かみの再生紙に触れて楽しく遊んでもらいながら、お子さんたちが環境に対する意識を小さなうちから育むきっかけになればと期待しています。今後も、再生紙を使って市民の方との交流を増やしていきたいですね。逆に、お子さんたちから「再生紙を使ってやりたいこと」を募るのも面白いかもしれません。
庁内では、どういったシーンで利用されているのでしょうか。 永田氏:全庁的な取り組みではありませんが、名刺に使ったり、対外的な会議でPaperLabの再生紙を活用している部署もあります。会話のきっかけになって場が和み、話題が広がりますし、市のPRにも繋がります。また、環境問題に取り組んでいる環境衛生課では、全面的にPaperLabの再生紙を使っており、年間にすると、その数は数万枚にものぼります。実際、紙としての機能面でも優秀だと思います。厚みが選べるので用途も広いですし、高級感がある。紙の上でも引っかかることなく、するする書けて筆滑りがいいんです。正直、ここまで質がいいとは思っていなかったので驚いています。再生紙に対するイメージが覆されました。
PaperLabとともに、
「循環型社会」の実現を目指す
酒田市役所のPaperLabには、他にはない特徴がある。それは、実機に掲げられた「東北第一号」というプレートの存在だ。そこには、酒田市が目指す「循環型社会」への熱い思いが込められている。
今後、酒田市の目指す環境政策のビジョンを教えてください。
永田氏:酒田市では、従来の役所主導型ではなく、市民の方々とともに「総合計画」を立てています。昨年は、延べ1,400人の方にご参加いただきました。市が抱える課題を一緒に考えながら、10年後の酒田市をどうしていきたいか、対話をしながら作り上げた大切な指標です。
環境政策では、「美しい景観と環境を全員参加で作るまち」というビジョンを掲げ、循環型社会の実現を目指しています。もともと環境問題への意識が高い方が多く、市内の企業さまのごみの排出量も順調に減っています。
我々の目指す「循環型社会」とはどういうものかを分かりやすくアピールするシンボルとして、PaperLabの存在は非常に重要だと思っています。こうしたシンボルがあることで、私たちの姿勢を分かりやすく市民の方にイメージしていただくことができる。そうした意味でも、今後もどんどん活躍させて、多様な使い方を模索してきたいです。
私たちの目指す循環型社会の実現に向け、PaperLabがその一端を担ってくれると期待をしています。
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