作業者目線の動画マニュアル撮影に活用
スマートグラスの活用により業務標準化やデジタル化による生産性向上が大きく前進
近年、多くの産業において生産年齢人口の減少による「人手不足」が表面化し始めている。これは製造業でも同様で、近い将来には深刻な人手不足が予想され、大きな課題となっている。加えて、工場や現場の設備保全、保守メンテナンスなどにおいては「属人化」という課題もある。こうした課題への対応として、「デジタル化による生産性向上」や「業務標準化」が待ったなしの状況になっている。セイコーエプソンでは、これらに対し種々の取り組みを行っているが、ここでは、スマートグラスを活用した取り組みを紹介する。
(上記写真)ICのパッケージを発煙硝酸を用いて除去する様子。薬剤を使う作業などは、映像を用いて作業標準にすることで、その危険性が伝えやすくなる。作業者目線の映像が有効なシーンだ。
【使用製品】ホストは社内の基幹ネットワークに接続できるWindows® PCを使用
ここで紹介する事例はいずれもスマートグラスにMOVERIO BT-45Cを使用。ホスト機器に関しては、広丘事業所がdynaEdge DE200、富士見事業所がノートPCとなっている。
BT-45Cの接続はUSB Type-C(Display Port Alternate Mode)であり、多くのホスト機器に対応できる。
MOVERIO BT-45C
ディスプレイ方式:シリコンOLED(有機EL)
解像度:1920×1080(Full HD)
質量:ヘッドセット部185g
(シェード、ケーブル除く)
価格:オープンプライス
Dynabook株式会社 dynaEdge DE200
広丘事業所
BT-45C+dynaEdge DE200
ノートPC
富士見事業所
BT45C+ノートPC
事例1 セイコーエプソン株式会社 広丘事業所
BT-45Cで動画を撮影し、作業者目線の動画マニュアルを作成
セイコーエプソン広丘事業所のIJS設備技術部では、プリントヘッドの生産設備の保守保全業務を行っている。保守業務は属人化が進みやすく、業務標準化が急がれる分野だ。標準化には、文書による作業標準書が作られるケースが多いが、細かい作業手順などは文章では伝わりにくい。そこで同部署では、BT-45Cを用いて作業者目線の動画を製作。これらを活用して業務標準化を進めているという。同部署の臼井さんにお話を伺った。
セイコーエプソン株式会社 広丘事業所
所在地:長野県塩尻市
インクジェットプリンターの開発・設計・製造(一部)を担当
【導入前と課題】
文書や写真だけでは分かりにくく、動画を用いた資料作成を検討
業務の標準化のために、すでに文書や写真を用いた作業標準書を作成してあります。しかし、文書や写真だけでは分かりにくい部分が多く、映像を用いた資料を作成することにしました。
当初は、アクションカメラを使ったり、作業者の横から撮影したりする方法を検討しましたが、正確に作業者の手元を写すのは難しく、狭い場所では作業者の横から撮れないといった課題もあり、スマートグラスのカメラを用いることにしました。
セイコーエプソン株式会社
広丘事業所
IJS事業部
IJS設備技術部
臼井 司さん
【導入後と効果】
スマートグラスなら作業者目線の分かりやすい動画撮影が可能
スマートグラスは、アクションカメラと違って撮影中の映像が視界のなかに映し出されており、動画の仕上がりを確認しながら作業できるのが最大のメリットです。作業者単独で撮影でき、撮影効率にも優れます。
作業者目線での動画で作業標準を作ることで習得時間の短縮や理解度の向上に繋げられると感じています。今後、グループ全体にスマートグラスの活用範囲を広げ、グループ全体の保全技術技能の伝承、人材育成の速度向上を実現できたらと考えています。
BT-45Cでの動画撮影は、撮影される映像をスマートグラス上で確認しながら作業できる。実視野の中に撮影中の映像が見えているため、撮影ミスが起きにくい。
ホスト機器であるdynaEdge DE200は、質量も軽いため作業時に負担になることはない。
作業時は、dynaEdge DE200を小型のポーチに入れ、腰の位置に装着。移動時も含め、両手での作業が可能だ。
クリーンルーム内でスマートグラスのカメラで撮影しながら、メンテナスを行う様子。細かいパーツの分解や組み立てが多く、文書や写真だけでは正確な作業手順が分かりにくい。
作業者の手元の映像。作業者目線の映像で、死角が少なく、解像度も十分で作業内容が分かりやすい。
事例2 セイコーエプソン株式会社 富士見事業所
キーワードは安全・伝承・共有。言語化しにくい作業を見える化
セイコーエプソン富士見事業所の技術開発本部分析CAEセンターは、同社の試作品や製品、場合によっては故障した製品の検査や分析の依頼を各拠点から受けて実施する部署だ。その分析内容は多岐に渡るが、作業の仕方や装置の使い方などは属人化しやすく、業務の標準化が必須の分野だ。しかも、手順が複雑であったり、危険を伴ったりする場合もあるため、映像を活用した視覚化が有効な分野でもある。そこで同部署では、これらをスマートグラスを用いて映像化し、共有化を進めている。同部署の宮澤さんにお話を伺った。
セイコーエプソン株式会社 富士見事業所
所在地:長野県諏訪郡
半導体設計、各種デバイス開発、ロボット生産などを担当
【導入前と課題】
従来の作業標準書では、化学反応や複雑な作業を伝えるのは難しい
これまで、安全と共有と伝承を重視して作業しているなかで、各種作業の手順、メンテナンスなどの非定常作業の手順、新人育成資料などを社内共有する方法を模索してきました。
いずれも紙の作業手順書は存在しますが、化学反応や動きのあるものをいかにして共有するかを考えると、動画が最も伝わりやすく、作業者の視点で記録することがベターだと考えました。結果、スマートグラスを用いるのがよいという結論に至りました。
セイコーエプソン株式会社
富士見事業所
技術開発本部
分析CAEセンター
宮澤 瞳さん
①
②
③
実際に行う作業の例として、IC(集積回路)の樹脂パッケージを溶液で溶解し、開封する作業を実演していただいた。ICを溶液の入ったるつぼに入れ(写真①)、加熱して溶解する(写真②)という作業だが、煙の色の変化度合いなど、映像で見ないと分かりづらい。これらをスマートグラスを装着して作業するだけで、作業者一人の作業で映像素材化できるのも利点とのこと(写真③)。
【導入後と効果】
属人化している作業や技術を伝承するには作業者目線の動画が有効
スマートグラスで撮影した映像を編集して、実際に活用していただいた方からは「化学反応で発生する煙の色の変化度合いなどは、紙で読んだだけでは分からなかったが、映像で見たら、すぐに理解できました」といった声が聞かれ、手応えを感じています。
私どもの部署も高齢化や属人化が進んでおり、言葉で伝えられない作業や技術などを映像化して、次世代の人に伝承して行きたいと思い、日々取り組んでいます。
ドラフトチャンバー(局所排気装置)を使用の場合など、危険を伴う場合はスマートグラスを着けた状態で面体も使用。映像はチャンバーのガラスと面体を通した状態だが、ボケたりブレたりすることはない(写真左)。
ノートPCはショルダーバッグに入れて装備(写真右)。
BT-45Cで撮影した画像。フォーカスを無限遠付近に固定し、無用なピント位置移動を防いでいる。
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