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No ID ~不詳なる命の者達~
藤井 孝美
■山口県 ■作品サイズ:A3ノビ、4枚組作品 ■使用プリンター:エプソン「SC-PX5VII」
■使用用紙:エプソン「Velvet Fine Art Paper」 ■使用カメラ:EOS 9000D(キヤノン)
とある港に行き撮影し続けていたもの。彼ら野良に名前(ID)はありません。首に跡もない暮らしは自由に見えて、平均寿命は4~5年とも言います。逃れられない自由の中で、必死に生きる彼らもまた命を持つ者達なのです。これは彼らID無き者の生きている証明写真です。
とにかく強い写真です。最近は肖像権の問題もあり、人間のポートレートはどこか逃げた印象の写真が多くなっています。この作品は被写体こそ犬ですが、正統派のポートレートで、そうした写真の力強さを改めて感じさせてくれます。しかも、野良なのか、作者を見据える表情からは甘やかされた犬にはない野性味、緊張感、生きる強さがビンビンと伝わってきます。組むことでイメージをかぶせ、微妙に変化をつけている点も素晴らしいですね。マット系の用紙で立体感や質感をしっかりと出し、作品としてのプリントの魅せ方も実に巧みでした。
一目で凄く強い写真だと感じました。人間の顔とほぼ同じサイズでプリントされた犬のポートレート作品、しかも目線もバッチリきているのが、目の付けどころを含めて非常に新鮮でした。最初は上手さが先に目立つのですが、じっくり眺めると犬の表情がストレートに心に届く写真ですし、上手く擬人化しているというか、犬の性格まで引き出そうとしているのが、とても面白いと感じました。今回応募していただいた写真以外も見てみたいと思わせる作品でした。
グランプリ
藤井 孝美 さん
藤井:今回の作品は、3年ほど前に下松港に野良犬が数多くいるということで、勤務している高校の生徒と一緒に撮影に行ったのがきっかけです。写真暦は20年ほどになりますが、学校で美術教員や美術部の顧問をしていることもあり、元々は油絵を描いたり、立体を作ったりしていました。最近は写真に傾倒していますが、油絵などの制作も含めて、「小さい命」「弱い命」をテーマにすることが多く、今回もその延長線上にある作品になります。
藤井:野良犬が集まる所では、多くの人たちが餌を与えているケースが多く、犬たちも餌をもらおうと人を見る習慣がついています。そのため写真を撮ろうとした場合、自然とカメラ目線になります。私自身は、そうしたことに気付いてから、餌を与えてはいけないと思っていますが、人が餌を与えることで繁殖してしまうという、不幸の連鎖が続いてしまっているのが現状です。現在、下松港には、40匹ほどの野良犬が生活していますが、元は人に飼われていた犬が捨てられ、野良になった犬の末裔です。下松市や隣の周南市は、野良犬が多いと問題になりますが、このような犬たちがいることを知ってもらいたいという気持ちで撮影、制作しました。タイトルに「No ID」と付け、このような犬たちの「証明写真」に見えるように制作しています。
SC-PX5VIIは、想像していた以上のプリント結果を得られることが多く、作品を制作するプリンターとしては最高だと感じています。この作品では、証明写真のように仕上げたかったので、余白に気を使ってプリントしました。また色調や暗い部分の階調に注意し、画像の調整は彩度を少し落として明瞭度を少し上げ、顔の大きさが揃うようにトリミングしています。プリント用紙には、質感などからベルベットファインアートペーパーが合っていると感じて、初めて使いました。モニターで写真を見る時とは違った仕上がりになり、犬の毛並みなどは想像していた以上の結果で、大好きな用紙になりました。
ずっと「小さい命」「弱い命」といったテーマで追いかけているので、写真を使って、そうしたものたちの現状を世の中に知らしめたいという思いがあります。
今回、取り上げた野良犬たちは、怪我や病気で4~5年の短い寿命という犬がほとんどです。この過酷な条件下で生きる彼らを生み出した元は、人間です。このような現状を写真に残し、観る人に訴えかける作品を発表することができたらと思っています。
銀の世界
西脇 亜美
■大阪府 ■作品サイズ:A4、3枚組作品 ■使用プリンター:エプソン「SC-PX5VII」
■使用用紙:エプソン「写真用紙クリスピア<高光沢>」 ■使用カメラ:EOS Kiss X7(キヤノン)
瞬間を捉える力が半端ないですね。偶然ではなく、写真をしっかりと撮りに行っている。被写体をよく観察し、完成イメージに基づき、迷いなく撮っているのが作品を通じて伝わってきます。おそらく普段の視点からして“写真の世界”を感じながら過ごしているのでしょう。何を見ても写真的に面白く感じられ、撮った写真を見ても次々とアイデアが生まれ撮り進められるほどの作家性が作者には備わっているのかもしれません。プリントは、余白のバランスが素晴らしく、窓枠効果を使い、写真の濃淡を無駄なく見せている点も高く評価できます。
影を使うのが上手い。暗部で写真を表現しようとしているため力強さが感じられます。作者の年齢は若いのですが、自分の世界観がしっかりとしているようで作品の1点1点にブレがない点は素晴らしいと思います。年齢的には、これから変化していく部分も多いと思いますが、小手先のテクニックではなく、大きなテーマをしっかり作って、それを伝えるために展覧会や作品集を作るといったことを目標にしたら、もっと面白い表現ができるようになると思います。すでに表現する面白さといったものが身に付いていると思うので、今後の作品も楽しみです。
ブランコ
鳥羽 敦
■東京都 ■作品サイズ:A3ノビ ■使用プリンター:PIXUS iP8730(キヤノン)
■使用用紙:GEKKOパール・ラベル(ピクトリコ) ■使用カメラ:EOS 5D Mark II(キヤノン)
今後の可能性という意味では未知数の作者。このユルさは狙いなのか、偶然なのかはわかりませんが、コンテスト作品によくある “あざとさ” が感じられず、自由に撮っているのが伝わってきました。面白いと感じたものに対して純粋な気持ちでレンズを向けているのかもしれません。それにしても用紙選びが絶妙。「作品イメージに合う」という意味ではマット系の用紙もよさそうですが、このパールのツヤが作者には必要だったのかもしれません。未知数な部分が多いだけに、ほかの作品も見てみたくなりました。今からグループ展示が楽しみです。
適度なユルさを感じさせる写真。カメラを見ている女性の嬉しそうな感じや青空など、写真の楽しさのようなものが溢れています。特にこの女性の“嬉し恥ずかし”といった感じの表情は、男性や子どもでは違った印象の写真になってしまう。色の取り入れ方や空の入れ具合なども悪くない。といって、下から見上げて空を大きく入れるわけでも、背景をスッキリとさせているわけでもなく、およそアイレベルで自然に撮っているのですが、不思議と画角の間合いというか、バランスが絶妙で面白い作品です。
時代
ファン カルロス ピント
■東京都 ■作品サイズ:A4、3枚組作品 ■使用プリンター:エプソン「SC-PX5VII」
■使用用紙:エプソン「Velvet Fine Art Paper」 ■使用カメラ:EOS Rebel T1i(キヤノン)、D750(ニコン)
公衆電話は少し前までは当たり前にありました。しかし、携帯電話が全盛の時代、あえてカメラを向ける被写体でもないため、どこに設置されていたかを思い出すのが難しいほどです。その公衆電話に目を向けている点である意味、記録性や時代性のある作品になりました。単なる記録ではなく、電話を掛ける人も同時に写し込むことで独特の面白さが生まれています。この作品のようなアプローチはあまり日本の作家には見られず、ヨーロッパの作家などに多い手法ですが、シンプルさが功を奏し、飽きずにいつまでも見ていられます。
ドキュメントだとしても、作られた写真だとしても面白さを感じるユニークな作品です。これから先無くなって行くであろう公衆電話を軸に、良いロケーションを見つけ出して時間をかけて丁寧に撮影している感じが伝わってきます。3点とも同じ場所で撮られているようですが、時間は経過しているようで僅かな変化が見られる点も面白い作品です。写真で遊んでいる感じがして楽しく、シンプルな構図の写真ならではの様々な想像を掻き立てられる作品であり、きちんと表現としても成立していて、記録としても意味のある写真なのではないかと思います。
第1回目ということで、基準がない中での審査となりました。そのため、最初のうちは様子を見ながら「どういった作品がこのコンテストに合っているのか」手探りで考えながらの審査となりました。逆にいうと、それだけニュートラルな見方で審査できたのではないかと思います。コンテストに応募される方は写真の上手な方がたくさんいらっしゃいますので、単に上手いだけでなく、伸びしろが感じられる作品、これから写真を撮り続けることで、さらにいい作品を残しそうな個性豊かな作者を中心に選びました。
第1回目のコンテストということで応募者の方もどういった写真を応募すればいいか迷った部分もあったのではないかと思いますが、入賞者以外も含めて写真が上手な方が多く、作品のレベルが粒ぞろいでした。今回は被写体や視点に「新しさ」の感じられる作品を中心に選びました。結果、ありがちなシーンだけれど視点を上手く変えることで「新しさ」を引き出した写真が上位に入ったのではないかと思います。
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