さまざまな患者の状態を再現できる医療シミュレーターを使った研修や授業に早くから取り組んでいる金沢医科大学。“振り返り”という意味のデブリーフィングで演習の実技を検証、医療現場で有効な知識と技術の習得に務めている。このデブリーフィングの場に、エプソンのインタラクティブプロジェクター「EB-1410WT」(ボード一体型)を導入。より効果的なディスカッションを実践し、医療事故防止に向けた活用法について同大学クリニカル・シミュレーション・センター専任管理者の石丸章宏氏にお話を伺った。
デブリーフィングに集中できるIT環境づくりが課題
金沢医科大学
クリニカル・シミュレーシ
ョン・センター
専任管理者(看護師)
石丸 章宏氏
金沢医科大学クリニカル・シミュレーション・センターでは、患者の姿を模した人型の医療シミュレーター等を使って、静脈採血や吸引といったタスクトレーニング、各トレーニングを融合させた総合的なトレーニングを行っている。併設する大学病院での症例やデータをもとにした生きた教材を活用し、学生はもちろん医師や看護師も日々研修に取り組んでいる。「チーム医療のテクニカルスキルを高めるのがシミュレーションの目的。事故防止に向けた医療マネジメントの手段として捉えています」と石丸氏。
医療シミュレーションは、まずブリーフィングでテーマを提示して、その医療行為に際して、10人前後のチームがどのように動くかを検討する。そして、シミュレーターを使った演習で行動に移し、最後に、演習の動画を見ながらデブリーフィングで検証するという流れになっている。デブリーフィングは、講師役のインストラクターが舵取りをするのではなく、受講生が主体となってアナログホワイトボード周辺に集まり、事前に想定したゴールに到達できたかどうかを自分たちで討論している。
従来のデブリーフィングでは、大型液晶モニターに演習の動画を映し、資料やデータを天井据え付けのプロジェクターでスクリーンに投映、アナログホワイトボードに文字を書き込みながら討論していた。この設備の多さが懸念材料で、「文字を書いている時はホワイトボード、動画を見る時はモニターと視線が一定せず、議論に集中できなかったのです」(石丸氏)。また、ホワイトボードで書いたり消したりする手間、設備の多さによる準備の手間という問題も抱えていた。
動画にリアルタイムで書き込める効率性に期待
デブリーフィングのシステム変更の検討を始めたのは、2012年度末のこと。エプソンは、電子黒板機能内蔵プロジェクターのデモを実施し、その際に上位機種である「EB-1410WT」を紹介した。初めて「EB-1410WT」に接した石丸氏は、「スムーズにセッティングできそうだと感じました。据え置き型プロジェクターは、スクリーンまでの空間が必要ですが、これだとスペースを無駄にせずに済むと思いました」。
そして、機能の詳細を知るに連れて、受講生が見る場所が一つになるという課題に大きなメリットがあると確信したという。ホワイトボードに投映される動画や資料の上に直接ペンで書き込め、さらに、複数のページにまたがり、たくさんの書き込みに対応できることにも利便性を感じたそうだ。「動画と書き込みがひとつのホワイトボードで管理できるのですから、グループ全員の視線が定まり、議論の質も効率も上がると期待しました」。
他社製プロジェクターも検討したが、演習の様子を録画するビデオカメラをHDMI®でつなぎ、動いているシーンに直接書けることが選定理由のひとつになったそうだ。なお、2013年6月の導入後、医師・看護師の研修で使う教材が医療の現場で手書きした紙資料であることが多かったため、さらなる利便性を求め、スキャナー付きプリンターも2台追加している。持ち込んだ紙資料をスキャナーでホワイトボード機能に展開し、共有している。デブリーフィングで書き込みしたものをプリントアウトして医療実務に役立てており、紙資料での情報共有の利便性と有用性を再認識したそうだ。
チームの距離感が縮まり、医療現場で役立つデブリーフィングに
導入からわずかな期間しか経っていないが、動画と資料に直接文字を書き込めることで、デブリーフィングの充実に効果が出ているという。「ホワイトボードひとつで情報を知ることができますから、演習のどこに問題点があったのか、集中して考えることができます。チームとしての動きを振り返る時に、とても役立っています」と石丸氏。また、チーム医療というのは、人の動きだけではなく声のコミュニケーションも重要になるそうで、動画とともに音声も高品質で出力されることにも満足感があるそうだ。看護師である石丸氏も務めているインストラクターの間では、省スペース化できて視線も集まることから、「受講者との距離が近くなって、内容を理解できているかどうかの反応がすぐに把握できるようになりました」。
デブリーフィングでの基本的な書き込み内容は、問題点を丸で囲み指摘したり、立ち位置や振る舞いの確認をしたりというもの。自分たちの動画に書き込みながら振り返るというのが受講者に好評で、興味深く電子ペンを操作してくれるため、技術研修などを開かなくてもスムーズに使えているとのこと。
医師・看護師の研修は、実際にあった事例をシナリオで再現して振り返るものがメインで、例えば、患者さんが急変したらどう対応するかという教材を使っている。そして、指示や指摘を書き込んだ画面をキャプチャーして保存、病棟ごとにDVDやUSBメモリで持ち帰ってもらい、勉強会の実績データとして活用しているそうだ。「保存したデータは、同じ症例の患者さんに対応する際に活用してもらっています。頭で理解するだけでなく、一度実際に動いた記録ですから、現場でも役立ってくれると思います」(石丸氏)
医療スキルの向上につながる情報共有にプロジェクターを活用
クリニカル・シミュレーション・センターは、来年度から隣接地に建設される新棟に移設されることになっている。無線LANなどICT環境も強化されるため、より効果的に「EB-1410WT」を使えるようになると見ている。「施設も大きくなりますから、もう2、3台プロジェクターがあってもいいかもしれません」と石丸氏。将来的には、離れた部屋をつないでの医療シミュレーション研修も考えている。シミュレーションやデブリーフィングの様子を別室にいる大勢がリアルタイムで見ながら、質疑応答をするライブデモという形式である。「医療情報は、自分だけで持つものではありません。チーム、フロア、組織で共有し、スキルを高めて医療に従事することが大切です。情報共有を強化するという意味で、このプロジェクターがさらに役立つことを期待しています」(石丸氏)
今後の医療現場において、ICT機器はより必要不可欠なものになっていくというのが石丸氏の見解。しかしながら、ICTに強いとはいえないスタッフが多い職種であるため、いかに機器を簡単に扱えるか、効果的に学べるかという情報や技術をエプソンから提供してほしいと期待をしている。医療事故を少しでも減らすための効果的な手段として、医療シミュレーターやICTをこれからも強化していく構想である。
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