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柏市立大津ケ丘第一小学校
「プログラマッピング」活用実践事例
2023年、千葉県柏市立大津ケ丘第一小学校では4年生(当時)の児童が総合的な学習の時間にプログラマッピングに取り組み、「笑い」をテーマにコンテンツを制作した。12月に行われた発表会では、学校内のさまざまな場所に作品を投影して来場者たちを楽しませたという。同校の佐和伸明校長先生と杉山雄太先生に、プログラマッピングを使った授業についてインタビューした。
大津ヶ丘第一小学校に児童用のICT端末が導入されたのはいつですか。また、児童のICTスキルについて教えてください。
佐和校長先生:全校で1人1台端末が実現したのはGIGAスクール構想スタートの時期です。ただ、本校は10年ほど前に、企業からの提供を受けて1クラス分の児童用ICT端末を導入したことがありました。柏市の中でもICT機器の整備を実験的に行うポジションにあるといえます。
杉山先生:プログラマッピングに取り組んだ4年生は、3年時から続けて私が担任を受け持ちました。GIGAスクール構想が始まった2年生の時からiPadを少しずつ触りはじめて、3年生からはChromebookを使っています。子供たちは作文や何気ないやり取りなど、アウトプットの手段として日常的にICT端末を利用しています。
プログラマッピングをはじめてご覧になったとき、どのような印象をお持ちになりましたか。
佐和校長先生:私は以前からプログラミング教育の推進に取り組んでいたのですが、プログラマッピングはプログラミング教育が目指す論理的思考力の育成に役立つツールだと思いました。
本校では3年ほど前から、Scratchで作ったデジタルイルミネーションを地域の方に見てもらうイベントを実施していました。そこでプログラマッピングを使えば、校内のいろいろな立体物に作品を映すことが可能になるなと思いました。子供たちの発想力を育みながら、グループで取り組む協働的な学びを通じて、表現力の育成にもつながるのではないかという期待を抱きました。
杉山先生:私もプログラマッピングは面白いと思いました。これまでも子供たちはScratchなどに意欲的に取り組んで素晴らしい作品を作っていましたが、画面上で動作させるため、自分の端末の周りに人を集めて限られた人にしか見せることができませんでした。プログラマッピングでしたら、壁や天井など画面よりも大きなところに投影できるので、作品をたくさんの人に見てもらうことができる点が良いと思います。
「笑い」をテーマにしたプロジェクションマッピングの授業はどのようにして始まったのでしょうか。
杉山先生:4年生は1学期に国語で「落語」を学びます。もともと落語教育家の楽亭じゅげむ先生による授業が予定されていましたが、私はその授業に目的や意図を持たせたいと考え、校長に相談したところ、プログラマッピングと組み合わせたら面白いのではという話になりました。
佐和校長先生:プログラマッピングに取り組むにあたり、子供たちが意欲や目的をもつための工夫が必要だと感じていました。作って終わりではなく、テーマをもたせたかったのです。落語という、以前から取り組んでいた活動と組み合わせたら、さらに発展できるのではないかと考えました。落語の授業で習った人を楽しませるエッセンスを、デジタルでも表現できるのではないかと思ったのです。
プログラマッピングに取り組んだ授業について教えてください。
杉山先生:作品の制作期間は、11月初旬からの約1か月半です。子供たちはプログラマッピングの操作をすぐにマスターしました。時間がかかったのは、やはり中身の部分です。じゅげむ先生から「良いお笑いとは何か」を学んでから、「笑い」をテーマにした作品のストーリーを考えました。しかし、実際にプロジェクションマッピングの映像を作ってみると、子供たちが伝えたいことがうまく表現できず苦戦していました。そこで、じゅげむ先生に作品を見てもらったり、私たちがアドバイスをしたりして、ストーリーを作るところに時間をかけました。
班ごとに作品づくりに取り組まれたとのことでしたが、どのようにして授業を進めていったのでしょうか。
杉山先生:意見を出し合いながら考えをまとめる方法は班によってさまざまでした。放課後に私が班の数だけGoogle Meetを開いて、顔を見ながら話し合いをすることもありました。映す場所を探しているときにも、「こんなストーリーが浮かんだけれど形にするのが難しい」「ストーリーは浮かんだけれど面白くないかも」などと、子供たちだけで考えを出し合いながら進めていました。
佐和校長先生:本校は「創造性を育む学び」に取り組んでおり、子供たちのクリエイティビティを発揮する実践を、日頃の学習に取り入れています。だからこそ、今回の実践授業は本校の狙いに合致していました。
本校で授業を進めるにあたり、エプソンさんと「どのようにしたらほかの学校でもプログラマッピングを学習に活用できるのか」についても話し合いました。そして、子供たちにプログラマッピングを紹介するための動画や作品サンプルを用意していただきました。また、プログラミング教育を行ううえで「教える」ことは思考力を養う観点からあまり望ましくないため、困ったときに自分たちで調べられるWebサイトも準備してもらいました。こうして子供たち自身で学びを進められるツールを用意していただき、実践授業を開始しました。
授業を進めるうえで、特に気を付けたことは何ですか。
杉山先生:何でも先回りして教えず、児童に考える時間を与えたことですね。状況によっては助けることもありますが、簡単にヒントを出さないようにしました。
たとえば、水槽に投影した班は光が透過してしまい、最初は全然、映りませんでした。すると自分たちで「どうしたら映るのか」を試行錯誤し、最終的にトレーシングペーパーを水槽に貼ることで解決しました。子供たちだけでその答えにたどり着いたのでとても頑張ったと思います。ほかの先生にもなるべく「見守る」ようにお願いしました。私自身も、もともと大事にしてきた「見守る」ことの大切さを再確認できました。
佐和校長先生:外部の人に見せるとなれば、「あの学校の子はすごい」と評価してほしいがために、大人は見栄えのいいモノを作りたくなりがちですが、子供たちの思考力を育むうえでそれをやってはだめだと思ったのです。ですので作品のクオリティではなく子供たちの作品づくりの過程を大事にし、具体的なヒントは出さず、「もっとほかのやり方はないかな」と言うようにしていました。
子供たちは作品を作る中でいろいろな壁にぶつかったのですね。どのようにして乗り越えていったのでしょうか。
杉山先生:作品づくりの過程で喧嘩をしてしまうこともありましたが、ひたすら顔を突き合わせ、話し合っていました。
佐和校長先生:私たちは、子供たちが自ら乗り越える壁を作りたかったのです。教育は「壁がないように」「子供が困らないように」と先回りしがちですが、こうした学びでは、子供がつまずく経験から学べることがあり、創造性が生きると考えています。
杉山先生:実際に、子供たちの成長のプロセスが作品から感じ取れました。リードすることが得意な子、表現力することが得意な子、発想力がある子、大勢の前でも物怖じせずに発表できる子、プログラマッピングの作品づくりを通して、それぞれが自分の得意なこと、自分の強みなどを見つけられたと思います。発表後は子供たち同士が仲良くなって、それぞれが自分の強み弱みを自覚してサポートしあいながら良い雰囲気で4年生を終えられました。協働していく中で当然、納得いかないこともあったと思いますが、お互いに落としどころを見つけていく力もつきました。
発表会を通して、どのようなことを感じましたか。
杉山先生:本校ではこれまでも6年生が地域の人に向けたイベントを行っていましたが、4年生は初めてでした。子供たちにこの話をしたとき、最初は「無理だよ」「イメージできない」といったネガティブな反応もありました。それがだんだんと形になってきて練習を重ねるにつれ、楽しみになっていったようです。発表会でたくさんのお客さんに拍手をもらって、フィードバックをもらうという大きなスケールのアウトプットの機会は、子供たちの自信につながったのではないかと思います。
佐和校長先生:発表する場がある、しかも学校外の人に発表するという設定は、子供たちをいつも以上に本気にさせますね。先ほどもお話ししましたが本校は「創造性を育む学び」をテーマに掲げており、創造性に対する自信を持っている子を育てたいと思っています。自分たちの作品を、いろいろな人が喜んでくれて褒めてくれたという今回の経験は、「自分には創造力があり、周りの人を変える力がある」という、達成感につながったのではないかと思います。
プログラマッピングの良い点を教えてください。
杉山先生:シンプルさが良いと思いました。素材やブロックの数、命令などすべてがシンプルで、4年生という、ちょうど授業でプログラミングをはじめた学年、発達段階にはぴったりでした。組めるブロック数にも制限があるので、授業ではその制限の中で収めるにはどうしたら良いか考えてごらんと投げかけました。それが論理的思考力を育むことにもつながったと思います。
エプソンのプロジェクターに初めて触れた児童のようすを教えてください。
杉山先生:はじめは「プロジェクターがどんな機械なのかはわかるけれど、自分たちが触って良いの?」という感じでした。プロジェクターの仕組みについてエプソンさんに5分ほどの説明をしていただき、その後は実践を繰り返す中で徐々に子供たちが使っていきましたが、大きな問題はありませんでした。自分たちでセッティングして、発表の練習も楽しみながらやっているようすが見られましたね。
佐和校長先生:作品を見て回ったときに、投影した画面のサイズが班によって違う点が面白いと感じました。ディスプレイだとある程度サイズが決まってしまいますが、水槽のように小さな場所に映したり、大きな壁に映したりと、子供たちなりに画面のサイズをかなり意識していて、そこに自由度がある。いろいろな場所に映せるという自由度は、さまざまな発想を引き出してくれるのでとても面白かったです。
プロジェクターの明るさや画質はいかがでしたか。
佐和校長先生:今回は夕方に発表会を開催したのでプロジェクターの明るさや画質は充分だと感じました。ディスプレイなら昼間でも使えるかもしれませんが、平面上の投影となってしまい、面白味がなくなりますよね。プロジェクターは立体物の形状を生かして表現できるのが魅力だと思います。
プログラマッピングを活用した授業について、今後の展望をお聞かせください。
杉山先生:授業はやはり目的や意図が大事だと思います。教えれば子供たちのスキルは身に付きますが、それで意味のないものを作るのでなく、明確なテーマを持ちながら今後も授業を考えたいですね。
佐和校長先生:本校でこうした研究実践を行っている理由は、日本の子供は世界と比べて「将来の夢を持っている」「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」と考える割合が少なく((注)日本財団「18歳意識調査『第46回 国や社会に対する意識』」)、周りのことに興味がないことが課題とされているためです。学習指導要領では持続可能な社会の作り手を育てると謳われています。プログラマッピングは、子供たちが社会の一員として学校や地域の人たちの生活をより良くしていくことに貢献できる部分があると思います。これからを生きる子供たちに必要なスキルを、もっと発揮する場を作っていきたいです。「これがあればみんな喜んでくれるんだ」ということを学ぶ時に、プログラマッピングはきっと役立つと思います。
ありがとうございました。
佐和校長先生と杉山先生のお話からは、見守りからいかに子供たちが自信を持っていくかが実感できました。創造性を育む学びを実現するために、多様なアウトプットを模索する先生方は、ぜひプログラマッピングをご検討ください。