アクティブラーニングとは?文部科学省が推進する理由とその効果
アクティブラーニングは、直訳すると能動的学習という意味です。もともとは大学での教育で使われる言葉でしたが、現在では小中高といった学校教育全般にアクティブラーニングが求められています。
今回は、アクティブラーニングとはどういうものなのか、定義や具体例をご紹介します。
アクティブラーニングとは?概要と目的
PCやスマートフォンといった情報端末が普及し、膨大な知識に手軽にアクセスできるようになりました。一方で、その知識を使いこなす人材の育成が遅れています。従来の詰め込み型教育では、受け身になってしまう生徒が少なからずいました。
自分で考え、課題解決ができる創造的な人材を養うために注目されているのが、アクティブラーニングです。以下より、アクティブラーニングの概要とその目的を見ていきましょう。
概要
文部科学省による定義では、アクティブラーニングは「学習者の能動的な参加を取り入れた授業、学習法の総称」とされています。
従来の教育では、教員が教え、生徒がそれを聞く、という一方通行の講義形式を採用していました。一方、アクティブラーニングは、グループディスカッションやディベートを通して、生徒自身が調査、発見をしながら課題の解決に取り組みます。従来の方向性とは真逆の学習方法と言えるでしょう。
文部科学省が推進する理由と目的
戦後から高度経済成長期の日本は、モノづくり大国として世界に存在感を発揮してきました。
モノづくりの核となる製造業では、決められた枠組みの中でいかに早く、正確な作業ができるか、という点が重要だったのですが、AIやロボットの普及が見込まれる現在では、枠組み自体を作り出す創造的な人材が求められています。
こうした人材は、従来の詰め込み型教育では育成できません。そこで文部科学省が推進するのが、アクティブラーニング型授業の普及です。教員が課題を解いて見せるのではなく、生徒たち自身による試行錯誤を促すことで、未知の状況でも創造的な発想で課題を解決できる人材の育成を目指しているのです。
アクティブラーニングに見込める効果
アクティブラーニングで望める効果は、大きく分けると以下の3つです。
・主体性を持って学習する力が身に付く
・グループワークやディスカッションを通して、社会的能力が身に付く
・解決すべき課題を発見し、それを解決する力が身に付く
物事を学習する目的は、知識を蓄えることではなく、知識を実生活に活かせるようになることです。アクティブラーニングを導入すると、書く、話す、発表するといったアウトプットの力が自然と身に付きます。
コミュニケーションを前提とすることで、能動的な学習を促せるわけです。
また、どう伝えれば相手に分かりやすいか、といった、社会的能力を身に付けられるのも、アクティブラーニングの特徴と言えるでしょう。自分で課題を見つけ、どうすればそれが解決するのか、考える力も養えます。
アクティブラーニングの主な手法
アクティブラーニングには、いくつかの技法があります。代表的な実践手法を以下にご紹介します。
グループワーク
グループワークは、文字通りグループになって、特定の課題に対する意見交換を行う学習方法です。
具体的な手法は、以下のようにさらに細かく分かれています。
詳細が知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事 グループワークとは?授業に取り入れるメリットや進め方のコツをご紹介ジグソー法
1. 教員が全体に対して、学習テーマと4~6つの学習内容を共有する
2. 4~6人のグループを作り、提示された学習内容を各メンバーに割り振る
3. グループを解散し、新たに学習内容別の専門家グループを作る
4. 学習内容を学び、ほかのグループのメンバーに分かりやすく内容を伝える方法を考える
5. 専門家グループを解散し、元のグループで各自学習した内容を伝え合う
ある物事を誰かに教えるには、その物事を十分に理解しておく必要がある、という事実を実体験できる学習方法です。特定のテーマに対してグループ内に専門家を作ることで、各自の責任感を養う効果も見込めます。
Think-Pair-Share(シンク・ペア・シェア)
1. 教員が全体に対して課題を共有する
2. 課題に対する意見や回答を各自が考える
3. ペアを作り、お互いに考えた内容を伝え合う(考えの根拠も伝える)
4. さらに2~3つのペアをグループにし、各ペアが話し合った内容を伝え合う
Think-Pair-Shareは、その名の通りまず提示された課題を考え、ペアを作って意見をシェアする、という流れの学習方法です。自分と他人の意見を比べながら、より良いアイディアに仕上げていくことができます。
ラウンドロビン
1. 教員が全体に対して課題を共有する
2. グループ全員が順番にアイディアを発表する(アイディアに対する指摘、疑問点の解消は最後に行う)
ラウンドロビンは、持ち回りという意味の英単語です。グループのメンバー全員が順番に意見を言い、それを記録していきます。誰かの発言に対して、その場では意見せず、とにかく数を多く出すことに注力します。
数多くのアイディアを集めることで、課題の解決策を多角的に検証することが、この学習方法の目的です。
PBL(プロジェクト・ベースト・ラーニング)
1. 課題を提示する(あるいは課題を見つけさせる)
2. 実現可能な解決方法を、論理的に考える
3. グループ内でアイディアを出しあい、必要な調査や資料を洗い出す
4. 各自が自主的に学習する
5. 学習した知識を課題解決に活かす
6. 学習内容を発表する
PBLは、Project Based Leaningの略で、課題解決型の学習を意味します。与えられた課題に対し、メンバー同士でグループワークやディスカッションを行い、解決方法を模索します。
模範解答がある課題もあれば、実社会に存在する未知の課題もあり、本質的な課題解決能力を養うことが可能です。
PBLの詳細が知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
関連記事 PBLとは?意味やメリット、授業に取り入れる方法をご紹介ディスカッション
1. 与えられた課題に対し、グループで話し合う
ディスカッションは、与えられたテーマに対して、3~10名程度のグループで討論し、結論を導き出すという学習方法です。個人のアイディアを複数の視点から検証することで、より実用的な想像力を養うことができます。
事前に役割を与えず、グループ内での自然発生を促すことで、協調性や積極性といった各メンバーの課題を浮き彫りにするという面もあります。
ディスカッションについて詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。
関連記事 ディスカッションとは?教育現場における授業の進め方とコツをご紹介アクティブラーニングの問題点と解決策
アクティブラーニングには、今後世界で求められる創造的な人材を育成するエッセンスが詰まっています。
しかし、その普及にはいくつかの課題も残されています。例えば以下のようなものです。
学習方法の選定が難しい
アクティブラーニングは総称であって、その中にいくつもの学習方法が含まれています。
しかし、学習方法を選定する基準がないため、授業の内容を考える際にどれを採用すべきか、判断に困ることがあります。
また、正解を導くというより、能動的な学習姿勢自体を学ばせる意味合いが強いため、成績の評価が難しくなる点も問題です。今後現場でのノウハウが蓄積、共有されることで解消する見込みですが、現段階では教員の判断に委ねられています。
教員に依存する
アクティブラーニングの学習方法には、複数人でグループを作って意見を発表し合う形式が多いです。
議論が白熱するあまり、言い合いや喧嘩に近い状態になってしまうことも考えられます。また、人前で意見を言うことに苦手意識のある生徒を、どのようにフォローすれば良いのかという問題もあります。
教員のファシリテーション能力によって、成果が左右される恐れがある点も、アクティブラーニングの課題です。
こちらは、教員に対する研修やガイドラインの策定などによって、解決を急いでいます。
時間が足りない
従来の授業形式と違い、アクティブラーニングはグループを作る、解散する、といった手順を繰り返すため、人の動きが多くなります。授業時間内に、課題が解決できるかどうか、やってみなければわからないことも多くあります。
学習時間が足りなくなる恐れがあるのも、アクティブラーニングの課題です。
こちらは、あらかじめ余剰分の時間を見積もっておく、タブレットやICT機器で効率化する、といった工夫で解決できます。
おわりに
アクティブラーニングは、課題を自己解決できる人材の育成に効果的です。ただ、授業で採用するためには、効率化と記録を計画的に行い、現場に合わせて最適化する作業が不可欠でしょう。
例えば電子黒板を導入すれば、資料や教材を投写することでグループ間の発表をスムーズに実行できます。
また、製品によっては書き込みも手軽に行えますから、議論を止めることなく意見をその場で記録することが可能です。
エプソンでは上記のような電子黒板や、高精度な書画カメラといった、アクティブラーニングに適した機材を用意しています。アクティブラーニング導入の際は、ぜひご検討ください。
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