教育の現場で活用!実践的なノウハウ集

ICTを授業に活用する際に知っておきたい基本知識と留意点

ICTを授業に活用

ICT(Information and Communication Technology)を授業に取り入れる動きが活発化しています。その背景には、文部科学省による学習指導要領の改訂があり、今後もますますICTが教育現場に浸透していくことが見込まれています。
ただ一方で、ICTの活用方法については、具体的な指針がありません。今回は、ICTをどのように授業に取り込んでいけば良いのか、具体的な方法や活用事例を交えてご紹介します。

ICTを授業に取り入れる目的

ICTを授業に取り入れる目的

ICT機器を授業に取り入れる目的は、大きく2つあります。授業内容を分かりやすく伝えることと、生徒が能動的かつ創造的に学習を進められる環境を整えることです。ICT機器を導入する際は、この2つを念頭に、各ICTツールの特徴を吟味していくと良いでしょう。

例えばタブレットには、写真・動画の撮影、録音、歩数計測、角速度センサー、ネット接続など、多数の機能が付属しています。

これだけでも、生徒に物体を撮影してもらい、それを教材としたり、化学実験の様子を動画として残したり、さまざまな使い方が考えられるでしょう。生徒が実際に手を動かす形で導入すれば、自分で発見する感覚を得られ、学習にも前向きになることが期待できます。

また電子黒板は、板書を画像化して別の授業で再利用できたり、既存の教材を投写して書き込んだり、そのまま使うだけでも授業の効率化を図ることができます。生徒の集中力を途切れさせることなく、スムーズな指導が実現できるでしょう。

ICT教育については、こちらの記事を参考にしてください。

関連記事 ICT教育とは?期待できる効果やメリットとあわせてご紹介

ICTを授業に活用した事例

ICTの活用方法は、機器の種類や教員のアイディアによりさまざまです。ただ基本的には、以下の3つの状況で使われます。

分かりやすく説明したいとき

動画や写真を使うことで、黒板や口頭での説明では伝えることが難しいディティールまで伝えられるようになります。Webに接続すれば、世界中で公開されている多種多様な資料を参照することも可能です。

また、3D映像を活用すれば、回転、ズームイン、ズームアウト、というように、自分で動かしながら対象物の理解を深めることもできます。これは、アナログ教材では実現できない、ICT機器ならではの活用事例の1つです。

興味や関心を持って欲しいとき

動画で興味を引く以外にも、生徒に情報端末を持たせて、それを使って手を動かしてもらう方法もあります。朗読した音声を録音して聞かせる、生徒が図形を撮影し、端末上で加工する、といったことです。

教科書に載っている資料ではなく、自分が作ったもので学習してもらうことで、創造性や好奇心の発達を促すのです。

子ども達が何かを発表するとき

ICTを導入する目的の1つは、能動的に考え、行動できる人材を育成することです。人前に立って自分の意見、アイディアを発表する授業は、その目的に合致しています。ICTを使えば、作成した資料をクラスメイトに共有しながら、自分なりの演出を交えて発表できます。

また、その場で何か指摘事項が出た際、関係する情報を検索して議論を促す、という使い方も可能です。ICT機器を活用すれば、生徒同士にリアルタイムで試行錯誤させることができます。

ICTの導入に必要なもの

ICT機器は、多岐にわたります。どれを導入しなければならない、という厳密なルールはありませんが、少なくとも文部科学省がまとめた教育振興基本計画には、以下のようなものがリストアップされています。

コンピュータ(PC・タブレット)

端末の指定はありませんが、生徒に対しては3クラスに1クラス分程度(授業展開に応じて必要な時に「1人1台環境」を可能とする環境)、授業を担当する教員に対しては1人1台の整備が指針として示されています。

また、教育振興基本計画を基に推進されるGIGAスクール構想では、「1人1台コンピュータを令和5年度までに小中全学年で達成する」という目標が掲げられており、将来的には生徒全員が端末を所有することを見込んでいます。

手元に端末がないと、ICTの導入で見込めるメリットの大部分が失われてしまいますから、もっとも重要な機材と言えるでしょう。OSや使用できるアプリケーション、スペックなどを吟味しながら、利用目的に合った機器を選ぶことが大切です。

超高速インターネットおよび無線LAN

多くのICT機器は、ほかの情報端末との通信を前提に作られています。

また、GIGAスクール構想では、1人1台コンピュータと高速大容量ネットワークをセットで推進しています。文部科学省の指針に従うなら、インターネット環境の整備はICTの導入に必要不可欠と言えるでしょう。

ICT授業は、クラウド技術(ネットワークを通して仮想的にソフトウェアやハードウェアを操作する技術)を活用して行うことが多いです。ネットワーク環境もそれに対応できるものにする必要があります。

GIGAスクール構想では、「ハブやルータ、スイッチ類は1Gbpsの普及モデル」「クラウド活用及び動画視聴やオンラインテストをストレスなく実行できること」など、ネットワーク環境の標準仕様が提示されていますから、導入の際は、そういった情報も活用されると良いでしょう。

大型提示装置(電子黒板)

電子黒板とは、文字通り電子データを表示するための装置です。こちらは、各普通教室に1台。特別教室に6台が目標水準とされています。

プロジェクター型とモニタ型があり、どちらを選ぶかによって費用や使う際の手間が変わります。省スペースであることや、可搬性が高いこと、大画面に投写できることなどから、プロジェクター型の電子黒板の方が、人気が高いです。

画面サイズによる学びの平等性への影響についてはこちらをご参照ください。

学びの平等性

視力や席順によって伝わり方に差が出ないよう、大型の画面サイズを検討されると良いでしょう。

そのほかのソフトウェア・ハードウェア

そのほか、以下のようなソフトウェアも必要に応じて導入されます。

・遠隔地にいる生徒同士が協働して学習するためのツール
・デジタル教材(電子化した教科書や教員が自作したコンテンツ)
・情報端末上で画像や図形、文字を編集できる電子模造紙
・セキュリティ対策ソフト

ICTを授業に取り入れるメリット・デメリット

ICT授業のメリット・デメリット

ICTを導入する際は、利点だけでなく欠点も把握しておくと、現場で柔軟に対応できるでしょう。続いては、ICTを授業に活用するメリット、デメリットをご紹介します。

教員側のメリット

・書類が電子化されることで事務処理が効率的にできるようになる
・教員間での教材資料や情報の共有が容易になる
・授業を工夫できる幅が広がる

教員側のメリットとしては、電子化による業務の効率化が挙げられます。
紙資料をコピー、配布、管理する手間がなくなるほか、効率的に情報共有ができるようになります。

生徒側のメリット

・映像や画像、音楽などを活用した、分かりやすい授業が受けられる
・板書や図画などを書き写す手間がなく、観察や考察に時間を使える
・検索や編集など、ICT機器を活用した情報処理技術が身に付く
・ICT機器を使った実習が増えると、手を動かしながら楽しく学習できる

暗記重視の詰め込み型教育ではなく、自分で手を動かして情報を収集、解釈する力を身に付けられる点が、ICT教育の大きなメリットでしょう。また、学習教材が電子化されることで、書き写しなどの作業が効率化され、集中を切らさずに課題に取り組めるのもメリットです。

教員側のデメリット

・ITリテラシーに差があり、授業の均質化が難しい
・ICT機器の使い方を学ぶ手間と時間が求められる

教員側のデメリットとしては、個人の能力に依存する部分が大きい、ということが挙げられます。官民一体となってガイダンスや研修を行っているため、時間が解決する問題と言えますが、近々導入を考えている場合は留意しておくと良いでしょう。

生徒側のデメリット

・機器にトラブルがあった場合、授業が中断してしまう

ノウハウの蓄積により解決される問題ではありますが、通信トラブルなどがあった際、代替案がないと授業が中断してしまう点は、ICTを取り入れた授業のデメリットと言えるでしょう。

ICTを授業に導入する際の留意点

ICT授業の留意点

ICT教育のノウハウは着実に蓄積されていますが、まだまだ発展途上です。
例えば導入する機材ひとつとっても選択肢が豊富で、選び方を間違えると万人が使いづらいツールになってしまう可能性があります。使いこなすのに時間が掛かりそうな製品は避け、なるべく汎用的な操作性を持っているものを選ぶことが大切です。

いずれにせよ、ICTは上手く活用して初めて効果が出るものです。ノウハウに沿ってただ道具を使うのではなく、生徒の反応を見ながら、教員の判断で柔軟に導入していくことが大切です。

おわりに

ICTを授業に導入すれば、動画やグラフを使った分かりやすい授業ができるだけでなく、生徒に情報端末を使ってもらうことで、能動的な学習の促進も可能です。生徒も教員も、楽しみながらより良い授業を実現することができるでしょう。

また、電子黒板やタブレットといった定番の機器に、立体物を映せる書画カメラ(実物投映器)をプラスすれば、資料などをリアルタイムで大画面に写すことができます。

エプソンでは、書き込みができるプロジェクターのほか、電源不要で使いやすいコンパクトな書画カメラもラインアップしています。ICT機器の導入の際は、ぜひ検討してみてください。

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